せめ)” の例文
朕カ在廷ざいていノ大臣ハ朕カためニ此ノ憲法ヲ施行スルノせめニ任スヘク朕カ現在及将来ノ臣民ハ此ノ憲法ニ対シ永遠ニ従順じゅうじゅんノ義務ヲ負フヘシ 
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
あゝ汝聖なる流れのかなたに立つ者よ、いへ、この事まことなりや否や、いへ、かくきびしきわがせめに汝の懺悔のともなはでやは 一—三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あなたは決して自分のなすった事の成行なりゆきがどうなろうと、その成行のために、前になすった事のせめを負わない方ではありますまい。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
兵乱のために人を殺し財を散ずるのわざわいをば軽くしたりといえども、立国の要素たる瘠我慢やせがまんの士風をそこなうたるのせめまぬかるべからず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そしていやしくも物を書くほどの人が、そういう間違いをするというせめの一半は、いわゆる科学普及にありはしないかという気がする。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
欺く事でございます、どのような強いせめに遭いましても覚えない事は白状いたされません、はい如何にも残念な事で、御推察下され
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
文字に忠誠なばかりに記されざるものを看過し、後世の誤れる解釈を成長せしめたのは、官人たちよりもむしろ学者のせめであった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
自分の命といふことよりも、美智子と艶子さんをなくしてしまつたことが皆な私のせめなので——それに当惑してゐるのでした。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
今は主君と先祖の恩恵にて飽食ほうしょく暖衣だんいし、妻子におごり家人をせめつかい、栄耀えいようにくらし、槍刀はさびもぬぐわず、具足ぐそくは土用干に一度見るばかり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
法律の制裁はいざ知らず、自然の制裁として、平岡もこの結果に対して明かにせめを分たなければならないと思ったからである。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分の苦しみのせめをたがいに転嫁し合い、実際にそうだと信じてしまう。それよりはむしろ一人きりの方がよい。苦しむのは一人きりだから。
全然すっかり力が脱けて了った。太陽は手や顔へ照付ける。何かかぶりたくもかぶる物はなし。せめて早く夜になとなれ。こうだによってと、これで二晩目かな。
母親と聞いて文三のしおれ返るを見て、お政は好いせめ道具を視付みつけたという顔付、長羅宇ながらう烟管きせるたたみたたくをキッカケに
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
偽りを申して、後に露見するよりも——申せぬか?——飽くまで、白状せぬとあれば、せめ折檻せっかんしても、口を割らすぞえ
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
よし節子を囲繞とりまく一切の病的なものがことごとく彼のせめのあることでは無いにしても、それほど彼女を力の無いものとした根本の打撃は争われなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この二人が乗って来た乗物の中へ自分が乗って甲府へ行って、このせめは引受ける、村の人たちにはかかり合いはさせぬ
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この意をじゃね、願わくは貴方あんたから国手にお伝えのほどをひとえに希望します。私は職務上の過失であらばせめを負うです。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今やフラミニアは死せり、現世うつしよの爲めには亡人なきひとの數に入りたり。世にはこれを抱き、その唇に觸るゝことを得るものなし。是れ我がせめてもの慰藉也。
然し今は病人をひかえていてそれが出来ない、雑誌社の督促に打ちまけて単にこれだけを記してせめをふさいでおく。
北海道に就いての印象 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
やせたりや/\、病気揚句あげくを恋にせめられ、かなしみに絞られて、此身細々と心引立ひきたたず、浮藻うきも足をからむ泥沼どろぬま深水ふかみにはまり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたくしは去年からそう思っているが、優善さんの奮って自らあらたにすべき時は今である。それには一家を構えて、せめを負って事に当らなくてはならない
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
何事もなければ仔細はないが、こういう事件が出来しゅったいした以上、もう隠すにも隠されない破目はめになって、市之助は当然そのせめを負わなければならなかった。
半七捕物帳:14 山祝いの夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
幸徳らの死に関しては、我々五千万人ひとしくそのせめを負わねばならぬ。しかしもっとも責むべきは当局者である。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
と、自分のせめのように、家のなかを見廻した。小説修業の女弟子などが出はいりするのが、美妙が軽薄才子のようにののしられるたねなのではないかと案じた。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そのような一事のせめとも覚えませぬ。例のごとく、公卿たちの、殿への憎しみが、表になったものでおざろう。
わたしは何故久しく筐底きょうていの旧稿に筆をつぐ事ができなかったかを縷陳るちんして、わずかに一時のせめふさぐこととした。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
治右の手が廻っているといないとに拘わらず、大目付の役向きあるものが目違いしたせめは免がれないのです。
こうした結果になったのは、自分の心の上にも、一本調子になれなかったせめがあるし、美沢にも多少の責任はあるが、半分までは妹が悪いのだと思っていた。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
なぜならば私が貴国に入らなかったならば貴国臣民は決してかかる問法のせめに当る筈はないからである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そこで僕は今、この話を書く事によって、新小説の編輯者へんしゅうしゃに対する僕の寄稿のせめまっとうしようと思う。
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ゞ是非なく拷問がうもん申し附るとこれより庄兵衞の昌次郎は拷問がうもんかゝり種々せめられつひに人殺しの一條より國を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
以前は鉄道の保線主任であったとかだが、汽車が脱線顛覆てんぷくして死傷者までも出したのでせめを引いて辞職し、それ以来、この田舎にひっ込んで楽に暮しているのであった。
繪圖面紛失のせめを負つて死ぬことゝ、娘のお勇は、良助を諦めて、親類方の決めてくれる婿を容れ、柏木藤兵衞の跡を立てゝくれるやうに——といふことで終つて居ります。
で、材料ざいりょう取捨しゅしゃ選択せんたくせめ当然とうぜんわたくし引受ひきうけなければなりませんが、しかし通信つうしん内容ないよう全然ぜんぜん原文げんぶんのままで、私意しいくわへて歪曲わいきょくせしめたような個所かしょはただの一箇所かしょもありません。
憲法があり法律がある今日、それを執行することが出来ないならば、農商務大臣はその責任を尽さないのである。そのせめを尽すことの出来ないものは速にその職を辞さなければならぬ
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
組織的なお話の出来ようはずがないから、この度はこれでせめをふさぐ事にする。
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
彼は三年来生殺なまごろしの関係にて、元利五百余円のせめを負ひながら、奸智かんちろうし、雄弁をふるひ、大胆不敵にかまへて出没自在のはかりごといだし、鰐淵が老巧の術といへども得て施すところ無かりければ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分達に態度を明らかにしなかった彼女にも一半のせめはある。しかし、何故、私は彼女のそうした心持ちを看取することが出来なかったのであろう。私の自負心は、私にこう考えさせていた。
一番温厚篤実おんこうとくじつな評判を得ていたと云う、親父おやじどのを、おどしたり、すかしたりして、自分たちの、あらぬ非望に引き入れて、しかも最後に、親父どのだけにせめを負わせ、裏長屋に狂い死にさせた
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
彼の為にさんざんせめさいなまれ、最後には、焼殺やきころされようとさえした畑柳倭文子は、危く難をのがれて、元の無事平穏な生活に帰った。目出度めでたし、目出度しである。誰しもそれを疑わなかった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
戰慄すべき慘禍の醞釀者うんぢやうしやは自分である。自分は其せめを負はなければならない。進んで身を渦中に投ずるか。退いて原因力を打ちつてしまふか。自分はこの二つの何れかを擇ばなければならない。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
もし余のことばよりて気力を回復せざるものある時は余は心竊こころひそかにその人の信仰薄きを歎じ理解のにぶきをせめたり、余は知れり死は生を有するものの避くべからざることにして、生物界連続の必要なるを
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
べっして大切なるお役目ちゅう、私の争いによって刃傷にんじょうに及びたる始末、重罪をも申付くべきところ、即座に自裁してせめを負いたる仕方しんみょうに思召され、よって食禄しょくろく召上げ遺族には領内追放を
日本婦道記:箭竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
きしかたのをかしの罪のひとつだにも、こらしせめ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
法律の制裁はいざ知らず、自然の制裁として、平岡も此結果に対して明かにせめわかたなければならないと思つたからである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この交際はいずれも皆人民の身の上に引受け、人々そのせめに任ずべきものにして、政府はあたかも人民の交際に調印して請人うけにんに立ちたる者の如し。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そしてそのせめは全く彼にある。彼は何物を犠牲にしても、この人のためにまことの進路を開き与えないのは嘘だと思った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この成金で、そうして天下泰平であった甲府の牢番も、勤めに在る以上、やはり相当のせめを尽さねばなりません。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
舌を食い切って死のうと思っても歯はございませんし、こんな地獄のせめはございませんから私はべずに死にます
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
深く年来としごろの不孝を悔いて、せめて跡に残った母だけには最う苦労を掛けたくないと思い、父の葬式を済せてから、母を奉じて上京して、東京で一を成した。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)