突如いきなり)” の例文
すると日頃丈夫な父親が急に不眠症を起して、突如いきなり宿へ転地して来た。もういやも応もなかった。仕舞ったと気がついたが、もうおそい。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
梯子段はしごだん踏轟ふみとどろかして上ッて来て、挨拶あいさつをもせずに突如いきなりまず大胡坐おおあぐら。我鼻を視るのかと怪しまれる程の下眼を遣ッて文三の顔を視ながら
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
その時はもうまるで夢中で、ただ那奴の憎らしいのが胸一杯に込上こみあげて、這畜生こんちくしようと思ふと、突如いきなり其処そこに在つたお皿を那奴の横面よこつつら叩付たたきつけて遣つた。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
突如いきなり噛着かみつき兼ねない剣幕だったのが、ひるがえってこの慇懃いんぎんな態度に出たのは、人はすべからく渠等かれらに対して洋服を着るべきである。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あなた。もう歩けないわ。私。」と鼻をならして、「手でも曳いて頂戴なねえ、不実よ。」と突如いきなり懐手ふところでして歩いている慶三の袖口へ手を入れた。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして更に机や手文庫を逐一調べて腑に落ちないか、チェッと舌撃したうちをしたが、突如いきなりしゃがむと机の下から座蒲団と共に、皺になった新しい手巾ハンカチーフを引摺出した
誘拐者 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
「えっ、お玉杓子たまじゃくしが何を云うんだい。私という女ながらも大親分に、じかに口が利けるもんか。黙って引込んでいやあがれ」と、お鉄は突如いきなり小虎を突飛ばした。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
彼は、突如いきなり苦しそうに、半身を起しながら、座敷中を見廻した。しかし美奈子が其処そこにいる訳はなかった。二三秒間身体を支え得た丈で、またどうと後へ倒れた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
突如いきなり蒲団を後から引いたので、蒲団は厠の入口で細君の手に残った。時雄はふらふらと危く小便をしていたが、それがすむと、突如いきなりどうと厠の中に横に寝てしまった。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼は突如いきなり、中へ飛び込んで行って男を引き擦り出して来た。その瞬間に、今までの蕩児らしい気分が跡方も無く消え去って、すっかり巡査としての職業的人間が彼を支配して居た。
奥間巡査 (新字旧仮名) / 池宮城積宝(著)
ず彼は自分の姿に変装させた友人を家に入れておき、老婆がひとりきりで茶の間にいるという合図にマンドリンを弾かせ、自分はそっと家へ忍込んで、突如いきなり老婆を襲ったのである。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
周三は眼色を變へて、立起たちあがツたかと思ふと、突如いきなりピツシヤリ障子を閉めきツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
応接室へ通されると、年若な記者は突如いきなり頭が卓子テーブル打突ぶつつかる程大きなお辞儀をした。
いま躊躇ちうちよしてはられぬ塲合ばあひわたくし突如いきなり眞裸まつぱだかになつて海中かいちう跳込をどりこんだ、隨分ずいぶん覺束おぼつかないことだが、およぎながらに、端艇たんていをだん/″\としまほうしてかんとのかんがへ艇中ていちうからは日出雄少年ひでをせうねん
突如いきなりすくんだような影が差した。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「○○町だってそれと知ったら反対したろうが、角町に出し抜かれて、突如いきなり押しつけられたものだから、否も応もない。しかし徳をした」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と精々喜多八きだはちの気分をただよわせて、突出つきだし店の硝子戸がらすどの中に飾った、五つばかり装ってある朱の盆へ、突如いきなり立って手を掛けると、娘が、まあ、と言った。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時雄はいかにしても苦しいので、突如いきなりその珊瑚樹の蔭に身をかくして、その根本の地上に身をよこたえた。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
けれども水練知らぬ者のように、突如いきなり救いの人へ抱きつくような危険はしなかった。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
まだ夜の明けるにはがあるが、いつまでもこんな所に寝ていられるものかと、吾輩は突如いきなり跳ね起き、こぶしを固めてそばおお太鼓を、ドドンコ、ドンドン、ドドンコ、ドンドンと無暗むやみに打叩けば
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
そこを出ると懐中ポケットから時計を覗かせて、ちょっと眺めると、突如いきなりどしどし急速に歩き出したので、渡邊は呆れて眼を円くしながら、後れじと跡をわねばならなかった、十分間もこんな状態が続くと
誘拐者 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
青年が、何かを答へようとしたとき、女は突如いきなり彼を遮ぎつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ところが昨日の朝、フラ/\とやって来て突如いきなり私のベンチに腰を下したものがあった。見ると例の若旦那だったから、私は好奇心を動かした。
朝起の人達 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
『こいつは愈々いよ/\面白おもしろくなつてた。』と武村兵曹たけむらへいそう突如いきなり少年せうねん抱上いだきあげた。
せかせかおいでなさって、(持って行く。)と突如いきなりおっしゃる。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
青年が、何かを答えようとしたとき、女は突如いきなり彼をさえぎった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と言って、その通りの真似をしたら、赤羽君が突如いきなり打ってかゝった。谷君は身をかわして逃げ出した。赤羽君が追っかけたら、佐伯君がさえぎった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
突如いきなり私を指した。私は立ち上ったが、用意がない。慌しく出身中学と生年月日を言って着席したら、立花君が
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
僕が当ったから、『おい、ノートを寄越せ』と言って、吉田君に貸して置いたのを取ると、『他のを見る奴があるか?』って突如いきなり後ろから突き飛ばしたんだよ。
母校復興 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と僕は突如いきなり言ってやった。一寸の虫にも五分の魂だ。再婚多妻論を主張しながら、陰に廻って縁談の註文をつけている。僕は社長の二重取引が癪に障ったのである。
人生正会員 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「叔母が母に『その山下さんてんな方?』って突如いきなりお訊きになりましたの。私、ハッとしましたわ」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と安子さんはもう好い加減にする積りだったが、茶化されたので、突如いきなり結論を口走ってしまった。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「時々来ます。突如いきなり引き合せて、誰だと訊いてやりましょうか? 面白いですな、これは。妻も喜びますよ。家で同窓会が出来ます。然う/\、会社ではだんさんが同窓の先輩です」
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と卓造君は突如いきなり立ち上った。狐のことを思い出したのである。四辺あたりはもう暮色蒼然ぼしょくそうぜん
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それも死ぬの生きるのと言わずに突如いきなり上ってしまうから溜まりません。そこでその男は笠置に待っている相棒に渡すまで荷を揺り通しです。笠置から新手がまた京都まで揺って行きます。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と菊太郎君は久子夫人に頭の働きを見せる積りか、突如いきなり揚げ足を取った。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と芸者は突如いきなり卓造君の膝をつねった。色気抜きだから念力がこもっている。
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「二郎兄さんが、早稲田、早稲田、早稲田って入って行って、突如いきなり後ろから俊一兄さんに抱きついて引っくり返ったんです。兄さんは万年筆にインキを入れていましたから、浴びちゃったんです」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「長倉は黙って聴いていたが、突如いきなり食ってかゝって来た。閣下のようにもう功成り名遂げた人は恥も外聞もなく、そんな禿頭を被って太平楽を並べていられるんですと言うんだ。失敬じゃないか?」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と私はひそかに期しているところを突如いきなり指されて尠からず面食めんくらった。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もっと突如いきなりではない。それまでに然るべく手順を運んでいる。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
とお上さんは突如いきなり文一君の掌に五十銭銀貨を押しつけた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「その前に何かあったろう? 突如いきなりってことはない」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「あの細君じゃ突如いきなり喉笛へくらいつくから、命が危い」
髪の毛 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
突如いきなり一番困る問題を持ち出した。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と安子さんは突如いきなり立ち上った。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「まあ、突如いきなり人身攻撃?」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
突如いきなりだから返答に困る。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
突如いきなり撲り合いを始めた。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
突如いきなり逆襲でしたね?」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)