おさま)” の例文
何でもこの騒ぎがなくッちゃおさまりません、因縁事とも相見えまして、町をはなれました、寺も、宮も。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
右の如く、人の自由独立は大切なるものにて、この一義を誤るときは、徳も脩むべからず、智も開くべからず、家もおさまらず、国も立たず、天下の独立も望むべからず。
中津留別の書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わけえ同志で斯ういう訳になって、女子おなごを連れて己の家へ来て見れば、家もおさまらねえ訳で、是もさきの世に定まった縁だと思って、あんまやかましく云わねえで、己が媒妁なこうどをするから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
われわれは唯その御支配のもとおさま御世みよの楽しさを歌にも唄い絵にも写していつ暮れるとも知れぬ長き日を、われ人共に夢の如く送り過すのがせめてもの御奉公ではあるまいか。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
西の海東の山路、かなたこなた巡りましつつ、あきらけくおさまる御世の、今年はも十あまり三とせ、瑞枝みずえさす若葉の夏に、ももしきの大宮人の、人さはに御供みともつかへて、ひんがしみやこをたたし
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
昔には夫唱婦和で表面うわべだけにせよ家庭がおさまった御治世もありましたから当時の道徳としてはそれでかったかも知れませんが、婦人の目がき掛けて男と対等の地位を自覚しようとする今日に
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
六番目の子供がきまでが手助けをしてくれますが、それでもうまく食ってはいけません…………それに世の中もよくおさまっていないものだから……どの方面にも銭はとられるし、きまったおきてはないし
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
其代りよし子が美禰子のいへへ同居して仕舞つた。此兄妹けうだいは絶えず往来してゐないとおさまらない様に出来あがつてゐる。絶えず往来してゐるうちには野々宮さんと美禰子との関係も次第次第に移つてる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「……主君尊氏は申します。きょうのことは早やきょうの合戦で定まった。しかし、世のおさまりはなお容易でない。楠木殿のようなお人こそ、ぜひ、明日あすの国事には必要なのだ。死なせてならぬお人なのだ、と」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
受けた為め気が転倒したのかと私しは思いますが目「いや其様な筈は有りませんたとい一時は気が転倒したにもせよ夫は少し経てばおさまります、藻西太郎は一夜眠た今朝になっても矢張り自分が犯したと言張ッて居ますから」此言葉にて察すれば目科は今朝こんちょう余の室を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
一 言葉を慎みておおくすべからず。仮にも人をそしり偽を言べからず。人のそしりきくことあらば心におさめて人に伝へかたるべからず。そしりを言伝ふるより、親類ともなか悪敷あしくなり、家の内おさまらず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
娘「はい有難うございます、もう少し立ちますとおさまります、もうびっくり致しました」
夫婦の間はなさけこそあるべきなり。他人らしく分け隔ありては、とても家はおさまり難し。
中津留別の書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
何だか知らねえがおっかアちがって何うせ旨くはおさまるめえ、われが憎まれ口でも叩いて、何うせなうちもうなやにゃアくめえと文吉ぶんきちも心配して居るが、何うも仕方がねえ、早く女親に別れる汝だから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とっさんの遺言をわれ忘れたか、従弟同士で夫婦になればいえおさまりもつくだから、かりそめにわたくしの遺恨をさしはさんで夫婦別れをするようなことがあると、草葉の蔭から勘当するぞと言わしったことを忘れて
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おだやかにおさまりますからうかって下さいな
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)