掛合かけあ)” の例文
「御米、久しく放っておいたが、また東京へ掛合かけあってみようかな」と云い出した。御米は無論さからいはしなかった。ただ下を向いて
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
公子 貴女の父は、もとの貧民になり下るから娘を許して下さい、と、その海坊主に掛合かけあってみたのですか。みはしなかろう。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三度目に掛合かけあった老車夫が、やっとの事でお豊の望む賃銀で小梅行きを承知した。吾妻橋あずまばしは午後の日光と塵埃じんあいの中におびただしい人出ひとでである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
矢張やはぼく友人いうじんだが、——今度こんどをとこだが——或奴あるやつからすこるべきかねがあるのに、どうしてもよこさない。いろ/\掛合かけあつてたがらちがあかない。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
この時などは実に日夜にちやねむらぬほどの経営けいえいで、また石橋いしばし奔走ほんそう目覚めざましいものでした、出版の事は一切いつさい山田やまだ担任たんにんで、神田かんだ今川小路いまがはかうぢ金玉出版会社きんぎよくしゆつぱんくわいしやふのに掛合かけあひました
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其時在所ざいしよの者が真言しんごん道場だうじやうであつた旧地へ肉食にくじき妻帯さいたい門徒坊もんとぼんさんを入れるのは面白く無い、御寺の建つ事は結構だがうか妻帯をさらぬ清僧せいそう住持じうぢにしていたゞきたいと掛合かけあつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
だが待てよ、どうせあの娘の一件で、神保のほうから脇坂の殿様へきつ掛合かけあいが行くに相違ねえ。こうしてインチキがれたからにゃア、おいらも安閑としてはいられねえのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「そんなわからん話はない。とにかく僕は掛合かけあわないじゃいられない」
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さアおほいにおどろいて、早速さつそく多助たすけうちつて、番頭ばんとう掛合かけあふと、番頭ばんとうずるやつだから、そんなものはおあづかまうしたおぼえはござりませぬ、大旦那様おほだんなさまかくれの時お遺言ゆゐごんもございませぬからあげる事は出来できない
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
御米およねひさしくはふつていたが、また東京とうきやう掛合かけあつて見樣みやうかな」とした。御米およね無論むろんさからひはしなかつた。たゞしたいて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三度目に掛合かけあつた老車夫らうしやふが、やつとの事でおとよの望む賃銀ちんぎん小梅こうめきを承知した。吾妻橋あづまばしは午後の日光と塵埃ぢんあいの中におびたゞしい人出ひとでである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
たび道連みちづれが、立場たてばでも、また並木なみきでも、ことば掛合かけあうちには、きつことがなければをさまらなかつたほどであつたのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小六ころく其通そのとほりを通知つうちして、御前おまへさへそれで差支さしつかへなければ、おれがもう一ぺん佐伯さへきつて掛合かけあつてるがと、手紙てがみあはせると、小六ころく郵便いうびんいたばん、すぐあめなかを、からかさおとてゝつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)