捻向ねじむ)” の例文
という顔色がんしょくで、竹の鞭を、トしゃくに取って、さきを握って捻向ねじむきながら、帽子の下に暗い額で、髯の白いに、金があらわ北叟笑ほくそえみ
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
或物あるものを窓の外へ推出おしだ突出つきだすような身のこなし、それが済むとたちまち身を捻向ねじむけて私の顔をジロリ、睨まれたが最期、私はおぼえず悚然ぞっとして最初はじめの勇気も何処どこへやら
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
エルマは首を捻向ねじむけるようにして対手あいての顔を見た。それは見覚えのある警察署長の顔であった。
警察署長 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
し一つ頭を捻向ねじむけて四下そこら光景ようすを視てやろう。それには丁度先刻さっきしがた眼を覚して例の小草おぐささかしま這降はいおりる蟻を視た時、起揚おきあがろうとして仰向あおむけけて、伏臥うつぶしにはならなかったから、勝手がい。
極めて狭い溝板どぶいたの上を通行の人はたがいに身を斜めに捻向ねじむけて行きちがう。稽古けいこ三味線しゃみせんに人の話声がまじって聞える。洗物あらいものする水音みずおとも聞える。赤い腰巻にすそをまくった小女こおんな草箒くさぼうきで溝板の上を掃いている。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
むっくり飛上ったかと半身を起して捻向ねじむ気勢けはい。女房も、思案に落した煙管を杖。ひとしく見遣った、台所の腰障子、いつの間にか細目に開いて、ぬうと赤黒いすねが一本。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
残らず橋を渡るや否や、士官は馬上ながら急にうしろ捻向ねじむいて、大声たいせい
千鈞せんきんの重さで、すくんだ頸首くび獅噛しがみついて離れようとしません、世間様へお附合ばかり少々櫛目を入れましたこの素頭すあたま捻向ねじむけて見ました処が、何と拍子ぬけにも何にも
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
肩でこう捻向ねじむいて高く上を視る処に、耳はねえが、あのトランプのハアト形にかしら押立おったったふくろたけ、梟、梟と一口にとなえて、何嶽と言うほどじゃねえ、丘が一座ひとくら、その頂辺てっぺん
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
げじげじのような眉が動いて、さも重そうな首を此方こなた捻向ねじむけんとして、それもせず。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何かに取掴とッつかまったらしく、堅くなってそこらを捻向ねじむく……と、峠とも山とも知れず、ただ樹の上に樹がかさなり、中空をおおうて四方から押被おっかぶさってそびえ立つ——その向ってくべき
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じっみはった、目のさえは、勇士がつるぎむるがごとく、袖を抱いてすッくと立つ、姿を絞って、じりじりと、絵図のおもてに——捻向ねじむく血相、暗い影がさっして、線を描いた紙の上を
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思い思いに捻向ねじむいて、硝子戸がらすどから覗く中に、片足膝の上へ投げて、丁子巴ちょうじどもえの羽織の袖を組合わせて、茶のその中折を額深ひたいぶかく、ふらふら坐眠いねむりをしていたらしい人物は、酒井俊蔵であった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その脚で畳をたが、おとがいを突出した反身そりみの顔を、鴨川と後室の方へ捻向ねじむけて
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人懐ひとなつッこいといったような調子で、光起にせな捻向ねじむけると、うなじを伸して黒縮緬くろちりめんの羽織の裏、くれないなるを片落しに背筋のななめに見ゆるまで、抜衣紋ぬきえもんすべらかした、肌の色の蒼白あおじろいのが、殊に干からびて
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時、捻向ねじむいて、くなくなと首を垂れると、った後褄うしろづまを、あの真黒まっくろくちばしで、ぐい、とくわえて上げた、と思え。……鳥のような、獣のような異体いていな黄色い脚を、ぬい、と端折はしょった、傍若無人で。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(寝ながら捻向ねじむく)これでもか、これでもか、と遣って下せえ。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目を見合わせて北叟笑ほくそえみした、伝九、更めて、つら捻向ねじむ
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と夜具風呂敷の黄母衣越きほろごしに、茜色あかねいろのその顱巻はちまき捻向ねじむけて
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、幹事もはじめて、こう逆に捻向ねじむいて背後うしろを見た。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小児こどもはなお含んだまま、いたいけに捻向ねじむいて
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)