“少(す)” の例文
大洞は、色を失つて戦慄(せんりつ)するお加女の耳に近(ちかづ)きつ、「少(す)こし気を静めさして今夜の中に密(そつ)と帰へすが可(よ)からう——世間に洩れては大変だ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
偽(うそ)が少(す)くないとか、親切なとか、云はば普通の女の普通の取なしの外に何(なに)が男をひきつけるものがあつたであらうか。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
今世(こんせ)の主君(きみ)にも未來(みらい)の主君(きみ)にも、忠節(ちうせつ)のほど顯(あら)はしたし、然(し)かはあれど氣遣(きづか)はしきは言葉(ことば)たくみに誠(まこと)少(す)くなきが今(いま)の世(よ)の常(つね)と聞(き)く、誰人(たれびと)か至信(ししん)に誠實(せいじつ)に、我(わ)が愛敬(けいあい)する主君(きみ)の半身(はんしん)となりて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
富即幸の感を繰返すことの少(す)く無(な)い記憶からそう認めているのである。
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さうよ、でも此の新聞社などは少(す)こし毛色が変はつてるから、貧乏な代りに余り非道も遣(や)らねいが、外の社と来たら驚いちまはア、さんざん腹こき使つた上句(あげく)
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
重(かさ)ねて十日(とうか)半月(はんつき)さては廿日(はつか)憂(う)き身(み)につらき卯月(うづき)も過(すぎ)たり五月雨(さみだれ)ごろのしめり勝(がち)に軒(のき)の忍艸(しのぶ)は我(わ)が類(たぐ)ひの引(ひ)きては葺(ふ)かねど池(いけ)のあやめの根(ね)ながき思(おも)ひにかき暮(く)らされて袖(そで)にも水(みづ)かさの増(ま)さりやすらん此處(こゝ)は別莊(べつそう)の人氣(ひとげ)も少(す)くなく氣(き)に入(い)りの八重(やへ)を
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
松村と言へる弁護士の妻女は、独り初めより怪しげに打ち目(ま)もり居たりしが「先生、私(わたし)も山木様の御縁談の御噂(おうはさ)をお聞き申しましたが、只今の御話とは少(す)こし違ふ様ですよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)