)” の例文
如何どう云ふ様に自分の態度を執るか、了見をめるか、口を利くか、身体を動かすか、智慧をめぐらすか、力を用ふるかといふ事である。
些細なやうで重大な事 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
朝鮮全土至る所の村や町では、まった日に五日おきぐらいに市が立つ。市日には凡そ五里四方ぐらいの物産が集散すると言われる。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
だれが何と言ってもと心のうちで覚悟をめていた所へ、兄からわが思いのとおりの事を言われたのだから嬉しいのがあたりまえだ。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
銀さんと私とがいよ/\上京とまつた頃は、母の織る機がいそがしさうに響きました。母は私の爲にヨソイキの角帶を織りました。
「それじゃ千々岩さん。その方はそれと決めて置いて、いよいよまったらすぐ知らしてくれたまえ。——大丈夫間違はあるまいね」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「姉さん、私、それが気に入りませんのよ。西川さんなら行きたかろうと初めからめていらっしゃるのが気に入りませんのよ、私」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もともと兄は学生時代から贅沢ぜいたく好きで、煙草は葉巻にめていたし制服も四季それぞれ山崎に造らせなければ気に入らなかったようだ。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
誰も戦意がなく、ただお義理に戦争しているのだから、同じ京都で十一年間も、顔を突き合わしていても勝負が、まらないのだ。
応仁の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
すべての精神異常は体質によってまるものであって、しかも体質なるものは目下のところ人力でこれ如何いかんともすることが出来ない。
闘争 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「ほんじゃ、明日の二時の汽車にしんべかな?」と豊作は、前々からの約束を、そして今朝のめを、再びそこに持ち出した。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そのいずれをとることになるだろうかは、一々彼の行動次第でまるはずだ。もし彼が普通列車の便をとるなら、それもよかろう。
私はもう、何もかもそうと自分の心でめてしまった。そうすると、胸が無性にもやもやして、口がいやかわきを覚えてたまらない。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
こっちから主水を探し出して、討って取ろうと少し前から、心にめた陣十郎が、今や一層にその心を深く強く定めたのであった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
このレコードに最後的の価値をめて、演奏者シュヴァイツァー博士の崇高なる人格と当代第一流のバッハ研究者としての識見と
公儀の預り金を一万両も費ひ込んだとあつては、家は断絶にまつてゐるが、遠州ほどの名人をそんな羽目に会はすのも気の毒だつた。
電信柱でんしんばしらはいうに、昼間ひるま人通ひとどおりがしげくて、おれみたいなおおきなものがあるけないから、いまごろいつも散歩さんぽするのにめている、とこたえた。
電信柱と妙な男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
要はすえ子が私以外のものを夫にめた、という点にあるのです。私は怒りました。悲しみました。そうして女性を呪いました。
悪魔の弟子 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
先発宿めの佐十さんが南摩なんまホテルで拒絶され、釜屋で門前払いを食い、ようやくにして佐野屋という変梃へんてこな家の二階と決まる。
村田と一緒にその会のことをめた。蓬莱亭の二階の狭い方の室を占領して、食事をぬきに、七時頃から遅くまで飲んで騒ぐことにした。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そうしなければあの夢のために自分に向いて来た幸福しあわせを、自分一人占めにする事は出来ないのだと、恐ろしい覚悟をめてしまいました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
いよい今夕こんせき、侯の御出立ごしゅったつまり、私共はその原書をなでくりまわし誠に親に暇乞いとまごいをするようにわかれおしんでかえしたことがございました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼は六時出帆しゅっぱんの船を待つ処をまだはっきりとめていなかったので、すぐどこかで一杯やりながらそれを待とうと思いだした。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
其処で余は主人の注意に従ひ、歌志内に廻はることにめて、次の汽車まで二時間以上を、三浦屋の二階で独りポツねんと待つこととなつた。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
舞臺には燕尾服を着た男が、退屈し切つたやうな顏に薄笑を浮べて、骨牌かるたを弄んでゐた。それからおまりの赤い球を指の間で隱見させた。
受験生の手記 (旧字旧仮名) / 久米正雄(著)
これを或る特別の語に用いる万葉仮名のまりと見たのでありますが、それだけではまだ本当の事実が明らかにならなかったのであります。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
まった名称なしに、空過することのできぬ日であった。カリアゲというのが最も普通に行われた古い日本語であったらしい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
答『人間界にんげんかい儀式ぎしきとはちがうが、矢張やは夫婦めおとになるときにはまった礼儀れいぎがあり、そしてうえ竜神様りゅうじんさまからのお指図さしずける……。』
全く予想外な事なのであつた。自分にはこんな呑気な、伸々とした、楽な時間は一度も与へられずに生涯を終るものとのみひとりでめてゐた。
(新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
其処で三ヶ月修行して、「教師」の資格を得て帰ると、今度は、県下に各々区域をめて、それぞれ布教に派遣されたのだ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
僕は畳の上に胡座あぐらをかくと、全く途方に暮れてしまった。何本目かのたばこを、火鉢の中に突きこんでいるときに、ようやく僕の決心はまった。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
成経 (われに帰りたるごとく)わしはあまりに苦しい、今はわしの一生の運命のまる時だ。わしに考えさせてください。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
朝の跡片づけの手伝いをすませた瀬川艶子は、自分の部屋にめられた玄関脇げんかんわきの三畳に引っ込むと、机の前にくずすわった。
五階の窓:04 合作の四 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
それで十七世紀の中ごろにおいてはその説は社会にまったくれられなかった。その時分にはヨーロッパでは主義は国家主義とまっておった。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「よう、得心してくれた。そなたも妙齢としごろ。いや後の二妹ふたりを嫁入らせるにも、先ず、そなたから先にまらねばなるまいし」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毎月まったお小遣いで、かえって私の友人の大学教授夫人の方がよっぽど豊かで自分勝手に着物や帯を買ってるのを見て羨ましかったのでした。
私の思い出 (新字新仮名) / 柳原白蓮(著)
急に思ひ立つて、厳しい日課時間表を作成して運動時間の運動種目までをめて、それが続かなかつた、またその続きを決めたい気がしたりした。
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
何の欠け目もない青年朝臣あそんでいて妻をまだめないのはどうしたことだ、しかるべく選定して後見のしゅうとを定めるがいい。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「お酌」と出した徳利から、心では受けまいとめていた酒を受けた。しかし、まだ何となく胸のもつれが取れないので、ろくに話をしなかった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
朱絃舎しゅげんしゃ——そんな名を選んだのも、その時分のことだった。「朱絃」という名のまるまでには、どんなにさまざまの名がえらまれたか知れない。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
集外三十六歌仙里見玄陳歌にも「遠方おちかたに夕告鳥の音すなり、いざそのかたに宿りとらまし」とあって、拙宅の鶏に午後四時にまって鳴くのがある。
「そんな思いきったことするのは、お京はんにまったる。お京はんとしては、無理あらへんやろ。そやけど、やっぱ、困るのは結局はこっちや」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
明樽買へれ程の大家たいけの娘をくれて、計り炭屋の嫁に遣りたいと云うなら貰っても宜しい、お前の娘なら貰おうが、わし一存でめる事は出来ない
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼の運命は遅かれ早かれ溺死できしするのにまっていた。のみならずふかはこの海にも決して少いとは言われなかった。……
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
出発点をめといて、二人が一緒に走り出すものじゃァないだろう。何方かが先に走り出すさ。その方が負だろう。威張ってみたって始まらないよ。
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
『今夜、かの仏陀ぶっだの聖堂を運び出せ。手段は予めめた如くせよ。聖堂は例によって白き巨人に届けよ』というのだ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
カピ長 さらば、づおかへりあれ。なれば木曜日もくえうびめまする。……そなたまへむすめうて、當日たうじつ準備こゝろまうけをさせたがよい。……おさらばでござる。
「圓朝——圓朝はいい。爽々しくていい名前だし、ドッシリともまたしているし。ウム、よかろうおめ、これに」
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
フォン・コーレンが出発することにめていた日が来た。朝はやくから大粒の冷めたい雨が降って、北東の風が吹き、海は大きなうねりを立てていた。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかしまた吶喊とめた上は、大将の命令を聴くのが当然だから、わたしは往々曲筆をめぐんでやらぬことがある。
「吶喊」原序 (新字新仮名) / 魯迅(著)
それからまた魔女まじょるのは、大抵たいてい日中ひるまだから、二人ふたりはいつも、れてから、うことに約束やくそくめました。