外見みえ)” の例文
一方には無駄な贅沢ぜいたく即ち酒道楽や女道楽に浪費する金銭を節し身分不相応の下駄や帽子に外見みえを張るような事を制して金銭を貯蓄し
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
つけるに外見みえを捨てその蝙蝠傘かうもりがさを借り遂に兩杖となりたるぞあはれなる道は捗取はかどらねど時が經てば腹は减りてまた苦を重ぬるを道人勇みを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
各〻外見みえのために力め、さま/″\の異説を立つれば、これらはまた教を説く者のあげつらふところとなりて福音ものいはじ 九四—九六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
今晩なぞとは手ぬるいぞ、と驀向まつかうから焦躁じれを吹つ掛けて、飲め、酒は車懸り、猪口ちよくは巴と廻せ廻せ、お房外見みえをするな、春婆大人ぶるな
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
外見みえを構はず豆なり栗なり氣に入つたを喰べて見せてお呉れ、いつでも父樣と噂すること、出世は出世に相違なく、人の見る目も立派なほど
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
△「まア何うしたんだ、勝もあんまり大人気ねえじゃねえか、熊の悪口わるくちは知ッてながら、せッてえば、くだらねえ喧嘩するが外見みえじゃアあるめえ」
外見みえも外聞もなくなって、ただ逃げよう、ただ助かろうと、他人ひとを突き退け踏みにじり、自分もこけつまろびつする人々!
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一時の太平にれて衣紋裝束えもんしやうぞく外見みえを飾れども、まこと武士の魂あるもの幾何かあるべき。華奢風流にすさめる重景が如き、物の用に立つべくもあらず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
自分の慎むべき秘密を人にあけすけに見ていられるような侮辱を感じたけれどこんなところにすでに来ていてそんな外見みえをしなくってもいいと思ったから
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
此人は衣装なりつくらず外見みえも飾らずごく朴実律義で、存魂ぞつこん嬢様に思込んでゐたがちつとも媚諛こびへつらふ容子を見せなかつた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
源助の忠太に對する驩待振くわんたいぶりは、二人が驚く許りおごつたものであつた。無論これは、村の人達に傳へて貰ひたい許りに、少しは無理までして外見みえを飾つたのであるが。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
学者らに心せよ、彼らは長き衣を着て歩むこと、市場にての敬礼、会堂の上座、饗宴きょうえんの上席を好み、また寡婦らの家を呑み、外見みえを造りて長き祈りをなす。その受くる審判はさらに厳しからん。
晴代を世話するのもさう云ふ社会の一つの外見みえで、衣裳いしやうや持物や小遣ひには不自由を感じないながらに、異性の愛情らしいものがなく、何か翫弄おもちやにされてゐるやうなさびしさと侮辱とを感じてゐたので
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
詞のふしによるのみならず、その外見みえによりてこれに劣らず心に訴へ、早くあはれみを人に起さしめんとするもそのさままたかくの如し 六四—六六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
... 奥の方に坐っていなければ食物たべものむ事が出来なかろうにねー」腸蔵「それがまったく外見みえだからだよ。外見にお金さんを前の方へ置くのだ。 ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
語気なだらかに説きいだすは、まあ遠慮もなく外見みえもつくらず我の方から打ち明けようが、なんと十兵衛こうしてはくれぬか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と勧められ、くよ/\して客を取る気もなくじょうのある様なふりをするも外見みえかは知れませんが、皆来てはくやみを云う。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
源助の忠太に対する驩待振もてなしぶりは、二人が驚く許りおごつたものであつた。無論これは、村の人達に伝へて貰ひたい許りに、少許すこしは無理な事までして外見みえを飾つたのであるが。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
汝等世の人、ことわりきわむるにあたりて同一おなじひとつの路を歩まず、これ外見みえを飾るの慾と思ひとに迷はさるゝによりてなり 八五—八七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
つまり日本風の料理屋へ行くと外見みえのために贅沢ぜいたくをしなければならず、西洋料理屋へ往くとなるたけ吝嗇けちにしなければならんものと心得ています。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
さりとは外見みえを捨てゝ堅義を自慢にした身のつくり方、柄の選択えらみこそ野暮ならね高が二子ふたこの綿入れに繻子襟かけたを着て何所に紅くさいところもなく
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
友之助は商いを仕舞って迎いに来ようと思ったが、そこは外見みえで女房の跡を追掛おいかけるようでいかぬから、銀座へ泊って翌日くと種々いろ/\跡に取込とりこみがあり、親類の客があるし
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
然し若し此時、かの藻外と二人であつたなら、屹度外見みえはばからずに何か詩的な立𢌞たちまはりを始めたに違ひない。兎角人間は孤獨の時に心弱いものである。此變遷は、自分には毫も難有ありがたくない變遷である。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
我は次に外見みえの劣れるよたりの者と、凡ての者のうしろよりたゞひとりにて眠りて來れる氣色鋭き翁を見たり 一四二—一四四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さりとは外見みえを捨てて堅義を自慢にした身のつくり方、柄の選択えらみこそ野暮ならね高が二子の綿入れに繻子襟しゅすえりかけたを着てどこにべにくさいところもなく
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今の人はどうも外見みえという方へ無駄むだな金銭をつかって実用という方へは大層倹約するように思えますね
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
娘はお客にも構わず飛んできまして、撫でたり胸を押えたり介抱する様子を、山三郎は見て居りましたが、孝心おもてに現われてなか/\浮気や外見みえでする介抱でございません。
然し若し此時、かの藻外と二人であつたなら、屹度外見みえはばからずに何か詩的な立廻を始めたに違ひない。兎角人間は孤独の時に心弱いものである。此みつの変遷は、自分には毫も難有くない変遷である。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
出て行かるゝなら途中が危険あぶない、腐つても彼火事頭巾、あれを出しましよ冠つてお出なされ、何が飛んで来るか知れたものではなし、外見みえよりは身が大切だいじ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
是故に汝のはかりを、まるく汝に現はるゝものゝ外見みえゑずして力に据ゑなば 七三—七五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
たとい心配でなくとも食物に対する時外の事を考ていてはならん、心を外へ向けるとそれだけ消化力を失う訳だ。よく昔の人は食物に頓着とんちゃくしないという事を英雄豪傑の外見みえにした。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この間から度々たび/\いう事だが、お前海上さんの方へ何う御返事をする積りなのだえ、よく考えて御覧、いつまでんな稼業をしているが外見みえではあるまいしね、お前とて子供ではなし
其の女房お蘭を助けて上総の天神山の松屋にかくまって置く事から、外見みえの場所でこれ/\はじしめた事から、掛合いに参って果し状を附けて、今晩粥河と出合であいをして、それから圖書が降参して
彼岸かのきしの人と聞くつらさ、何年の苦労一トつは国のためなれど、一トつは色紙しきしのあたった小袖こそで着て、ぬりはげた大小さした見所もなき我を思い込んで女の捨難すてがた外見みえを捨て、そしりかまわずあやうきをいとわず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何が飛んで来るか知れたものではなし、外見みえよりは身が大切だいじ、いくら襤褸ぼろでも仕方ない刺子絆纏ばんてんも上にておいでなされ、と戸棚がたがた明けにかかるを、十兵衛不興げの眼でじっと見ながら
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
外見みえも飾りもございません。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)