つかさど)” の例文
自分が建業を発するとき、呉王は親しくこの身に宝剣印綬いんじゅを授けたまい、しきいの内は王これをつかさどらん、閾の外の事は将軍これを制せよ。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さういふものを挟む必要が来た時は、もうその星のつかさどる運命は終つたので、彼等は次の星の運命の支配の下に引取られてゐるのだつた。
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
かの天をつかさどるもの、またその徳をあまたにしてこれを諸〻の星に及ぼし、しかして自らいつなることをたもちてめぐる 一三六—一三八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
と、いった時、さっき見た幻の顔が、島津家兵道の秘法をつかさどっている牧仲太郎に似ているように思えた。ただ、牧は、もっと若かった。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
ともかくも、たかが星暦卜祀せいれきぼくしつかさどるにすぎぬ太史令の身として、あまりにも不遜ふそんな態度だというのが、一同の一致した意見である。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
これは大きくいえば飛騨一国の物産を他国に出し、また他国の物資を飛騨に入れる会所であって、矢田権四郎がこれをつかさどっている。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私たち無産階級の婦人はいずれも家庭にあってくりやつかさどっているだけ、食糧の欠乏については人一倍その苦痛を迅速にかつ切実に感じます。
食糧騒動について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
うところの芸術家のみが創造をつかさどり、他はこれにあずからないものだとするなら、どうして芸術品が一般の人に訴えることが出来よう。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
自ら縄墨じょうぼくつかさどつて一宇の大伽藍がらん建立こんりゅうし、負ひ来りたる弥勒菩薩の座像を本尊として、末代迄の菩提寺、永世の祈願所たらしめむと欲す。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
神職 そ、その媛神におかせられては、ぐなること、正しきこと、明かに清らけきことをこそおつかさどり遊ばさるれ、かかる、よこしまに汚れたる……
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先導者らが得意になったほど、その例にならう者があまりに多かった。多数の文学者らが、今では政治を事として、国務をつかさどらんと考えていた。
ぢやによつて今度の先手さきては、今まゐりながら「れぷろぼす」に仰せつけられ、帝は御自おんみづから本陣に御輦ぎよれんをすすめて、号令をつかさどられることとなつた。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ではこれから、そちら二人と若郎子わかいらつこと三人のうち、大山守おおやまもりは海と山とのことをつかさどれ、ささぎはわしを助けて、そのほかのすべてのまつりごとをとり行なえよ。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その壮士坊主にもちゃんと親方もあり、またその仲間の規則もちゃんと立って居って、その規則をつかさどって居る奴がある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「さうだ、とにかくこの戦ひは、我々の死活をつかさどるものである。最後まで頑張らう!」と云つて降壇したのである。
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
これに対する朝鮮軍の行動であるが、日本軍出動の報が入ると、申砬しんりつ李鎰りいつの二人をして辺防の事をつかさどらしめた。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
電源もあれば、通信機もそろっているし、敵弾の防禦壁も完備していたし、地上及び地下における火器の照準や発射をつかさどる操縦装置も、ここに集まっていた。
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
右に分業といったが、すなわち、花盤かばん上にある小花はもっぱら生殖をつかさどり、周辺にある舌状ぜつじょう小花は、昆虫に対する目印めじるし看板かんばんあわせて生殖を担当たんとうしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
そのうちに村の旦那衆の顔もそろい、その日の祭りをつかさどる村社諏訪すわ分社の禰宜ねぎ松下千里も荒町からやって来た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
兇事を喜びつかさどる、一種の気である。「鬼門」とか、「鬼気」とか、または鬼界ヶ島とか皆その感じがある。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
人の生活をあらためさせたためしがあろうか、人はその人自身によって何事もあらためるものをあらためてこそいいが、式や形でそれをつかさどることは無理であるといった。
花桐 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
今一つ、伝統の授受をつかさどる宗匠が、連歌師どもと同じように、本当はどこの馬の骨か判らなくなっているということである。これが非常に大切な点なのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
『輟耕録』二四にかつて松江鍾山の浄行菴に至って、一の雄鶏を籠にして殿の東簷とうえんに置くを見てその故を請い問う。寺僧いわく、これをうて以てしんつかさどらしむ。
この封印する箱には和蘭オランダ国王より 日本国君(征夷大将軍を指したてまつるなり)に呈する書簡の鍵を納む。この書簡の事をつかさどるべき命を受る貴臣のみ開封し給うべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ことに女子にとつては最も大切なる一家の家庭をつかさどつて、その上に一家の和楽を失はぬやうにして行く事は、多くは母親の教育如何によりて善くも悪くもなるのである。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
家康は英人三浦按針を用いて造船のことをつかさどらしめ、ポルトガルの帰化人沢野忠庵は西洋の天文学を伝え、林吉左衛門及び小林義信等が西洋の天文学を学んだこともあり
彼らの運命をつかさどるゼウスの神どの! 十年もしたらというのか? ふん、十年もたつうちには、お袋は襟巻の内職か、それとも涙のためにでも盲目になってしまうだろう。
「いき」の無目的な目的は、くちびるの微動のリズムに客観化される。そうして口紅は唇の重要性に印を押している。頬は、微笑の音階をつかさどっている点で、表情上重要なものである。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
これが歴史的に、そして物語的に有名な「モンテ・キャアロの緑の LURE」なのだ。この金銭の遊戯をつかさどって、幾多の悲劇と喜劇が衝突するのを実験して来た証人である。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
ところが今、仮りに食物の摂取を中止して所謂飢餓の状態にったならば、屹度きっと肺の窒素固定機能が盛んになります。即ち消化管に代って、肺臓が人体の栄養をつかさどろうとします。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「奎吉」という声に呼び出されて来る母の顔付がいつかちがうものに代っていた。不吉をつかさどる者——そう言ったものが自分に呼びかけているのであった。聞きたくない声を聞いた。……
泥濘 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
成程左様だろう。し彼の牧師が結婚する段になると儀式をつかさどる人が無くなる。天一でなけりゃ一人で新郎になったり牧師になったり出来っこない。これで彼奴は独身でいるんだな。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
人間の運命をつかさどる世にも不思議な力であって、誰もこの神をおそあがめる。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
丁度船の日本についたのは王政維新の明治政府になってから、すなわち明治元年であるが、その事について当時会計をつかさどって居た由利公正ゆりきみまささんにあって後にきいた所が、ドウもあの時金を払うには誠にこまっ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
教の人における、一日もなかるべからず。飽食・暖衣・逸居いっきょして教なきは、禽獣に近し。教の政における、そのいつなり。われきく、文明の国たる、王家大礼あれば必ず教師をひきてこれをつかさどらしむ。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
睛※せいぶんといふ女の死して此花をつかさどる神となりしときゝ、恋しさのあまり、男、此花の美しく咲きたる前に黄昏の露深きをも厭はず額づきて、羣花のずゐ、氷鮫の※、沁芳の泉、楓露の茗四つのものを捧げ
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
初犯者および未成年者を収容する監倉かんそうつかさどることとなりぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
天の炎暑をつかさどる、必らずしも人を苦しむるのみにあらず。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
聖徳太子の推薦によって、天子の御膳職をつかさどっている。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
祭礼方面は土人司祭のバタチカンがつかさどった。
そを譬ふればヘーレーの娘ら、助産つかさど
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
或る不思議な調節をつかさどる無形な力に
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
鹿をつかさどる神様と魚を司る神様とが
アイヌ神謡集 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
一の圈の光と愛これを容るゝことあたかもこれが他の諸〻の圈をるゝに似たり、しかしてこの圈をつかさどる者はたゞこれを包む者のみ 一一二—一一四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
母衣のすそよりうつくしききぬの裾、ちひさき女の足などこぼれ出でて見え候は、歌姫うたひめ上手じょうずをばつどへ入れて、この楽器をつかさどらせたるものに候へばなり。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それで私は引き取りましたが、今度は僧侶の中の法律をつかさどって居る執法僧官に遇って、また許しを受けねばならん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
さらば、弟義経よしつねと不和となるや、義経逮捕を名として、全国に守護しゆごを配置して軍事、警察をつかさどらしめ、又兵粮米ひやうらうまい徴発ちようはつのために、各所の荘園に地頭ぢとうを置いた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
閼伽あか香華こうげの供養をば、その妻女一人につかさどらしめつゝ、ひたすらに現世げんぜの安穏、後生の善所を祈願し侍り。されども狂人の血をけ侍りし故にかありけむ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その中で皇女、豊鉏入媛とよすきいりひめが、はじめて伊勢いせ天照大神あまてらすおおかみのおやしろに仕えて、そのお祭りをおつかさどりになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
また、もっとも大事な倉庫方くりかた——金品出納の事務などは——蒋敬を部長とし、蕭譲しょうじょうには、通牒や文書のほうをつかさどらせ、金大堅に兵符へいふ印形いんぎょう、鑑札などの彫刻がかりを。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)