トップ
>
不機嫌
>
ふきげん
ふりがな文庫
“
不機嫌
(
ふきげん
)” の例文
かくてクリストフは、それらあわれな人々の喜びをそこなってしまうのだった。彼らには彼の
不機嫌
(
ふきげん
)
なわけが少しもわからなかった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
と
不機嫌
(
ふきげん
)
に仰せられて宮は横になっておしまいになった。夕霧の手紙は宮の御迷惑になるようなことを避けて書かれたものであった。
源氏物語:39 夕霧一
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
或
(
あ
)
る正月初めの一日だつた。私は二日ほど家をあけた後で、夕方になつてから、ぼんやり家へ帰つた。云ふ迄もなく母は
不機嫌
(
ふきげん
)
だつた。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
「どうだっていいよ、そんな事は。僕は
不機嫌
(
ふきげん
)
になった。君もそんな固くるしい言いかたをするという事を、はじめて知ったよ。」
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それで一緒に室の中に坐るという事が
尠
(
すく
)
なかった。そういう状態が一月し、二月するうちに、笠原は眼に見えて
不機嫌
(
ふきげん
)
になって行った。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
▼ もっと見る
「よかないわ。
貴方
(
あなた
)
に
不機嫌
(
ふきげん
)
になられて、ダンスを見る気分も壊れてしまったわ。だからお誘いしたら素直に来て下さるものよ。」
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
しかし、トム
吉
(
きち
)
が、
真物
(
ほんもの
)
どおりの
相場
(
そうば
)
で、
正直
(
しょうじき
)
に
買
(
か
)
ったと
知
(
し
)
ると、たちまち、
主人
(
しゅじん
)
の
顔
(
かお
)
は
不機嫌
(
ふきげん
)
に
変
(
か
)
わって、
怒
(
おこ
)
り
出
(
だ
)
しました。
トム吉と宝石
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
僕はこの芸術家たちを
喧嘩
(
けんか
)
させては悪いと思い、クラバックのいかにも
不機嫌
(
ふきげん
)
だったことを
婉曲
(
えんきょく
)
にトックに話しました。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
不機嫌
(
ふきげん
)
そうに勝手の間の入口に立って、何ですと
慳貪
(
けんどん
)
に問懸けるを、秋元の女房は下から上へじろりと見て、お坐んなさいと自分の座を少しさがり
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
シューラはいつも
不機嫌
(
ふきげん
)
な時によくする
癖
(
くせ
)
で、ちょっと顔をしかめながら、さも
癪
(
しゃく
)
だというような
調子
(
ちょうし
)
で
身体検査
(新字新仮名)
/
フョードル・ソログープ
(著)
と、夫人は、いつに似げなく
鞏固
(
きょうこ
)
に、忠興の
不機嫌
(
ふきげん
)
が納まるまで、手をつかえたきり哀願をやめなかった。
日本名婦伝:細川ガラシヤ夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
首領はわれがねのような声で
怒号
(
どごう
)
した。これは四馬剣尺の
不機嫌
(
ふきげん
)
なときの特徴である。そんなときにうっかりさからうと、
毒棒
(
どくぼう
)
の見舞いをうけるおそれがある。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
口をあけかかつた
瞬間
(
しゆんかん
)
、平次の冷たい眼にであふと、急にどなる元気がなくなつて、「もういいからあつちへ行け。」と相手に
不機嫌
(
ふきげん
)
さうにいふのでありました。
鳥右ヱ門諸国をめぐる
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
古代の人のような
帽子
(
ぼうし
)
——というよりは
冠
(
かんむり
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ、
天神様
(
てんじんさま
)
のような服を着換えさせる間にも、いかにも
不機嫌
(
ふきげん
)
のように、
真面目
(
まじめ
)
ではあるが、
勇
(
いさ
)
みの無い、
沈
(
しず
)
んだ
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ところが
或日
(
あるひ
)
のこと、自分の生んだ子の
子良
(
しりやう
)
が来て、おつ
母
(
か
)
さんは
何
(
な
)
ぜいつもそんな
不機嫌
(
ふきげん
)
な顔をしてゐるのですか、と
訊
(
き
)
きますから、実は
私
(
わたし
)
はお隣りの
助
(
すけ
)
さんや
子良の昇天
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
支那人のボオイはますます
仏頂面
(
ぶっちょうづら
)
をしだして、その男のために中央の円卓子の上を
不機嫌
(
ふきげん
)
そうに片づけ始めた。それを見ると私はなんだか急に微笑がしたくなった。
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
紳士の
不機嫌
(
ふきげん
)
が、クルミさんの心を
鞭打
(
むちう
)
ったのだ。が、そればかりではない。もう一つ大きな理由があったのだ。クルミさんは、紳士の右手を、はじめて見たのである。
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
日本人の知人を訪問しても、洋風の応接間などに通されると、帰ってからも
甚
(
はなは
)
だ
不機嫌
(
ふきげん
)
であった。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
いそいそとした蝶子を見るなり「阿呆やな、お前の一言で何もかも滅茶苦茶や」
不機嫌
(
ふきげん
)
極まった。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
婆やと
交
(
かは
)
る/\
訊
(
き
)
いて見ると、鷹雄といふ男は、これは又、実に気六つかしいらしい。気が向くと、朝から晩まで論文の原稿を書く、それがうまく行かぬと
不機嫌
(
ふきげん
)
になる。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
プルチネッラがすっかり
不機嫌
(
ふきげん
)
になっているときでも、コロンビーナだけはこの男をほほえませることのできる、いや大笑いをさせることのできるただひとりの人でした。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
まだ未練気にそう云ってる
不機嫌
(
ふきげん
)
の教授に訣れを告げて、復一は中途退学の形で東京に帰った。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「君はあまり他人の援助を求めすぎる」と、僧は
不機嫌
(
ふきげん
)
そうに言った。「そして特に女にだ。いったい、そんなのはあてにならぬ援助だということがわからないのかね?」
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
是
(
これ
)
は一つは
唯継事
(
ただつぐこと
)
近頃
不機嫌
(
ふきげん
)
にて、とかく内を外に遊びあるき居り
候処
(
さふらふところ
)
、両三日前の新聞に善からぬ
噂出
(
うはさい
)
で候より、心配の
余
(
あまり
)
様子見に参られ候次第にて、其事に就き私へ
懇々
(
こんこん
)
の意見にて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「云ひません。」彼れは彼れ独特なそして極く秘密な闇の観照を私から発見された事にひどい
羞
(
はぢ
)
らひを感じてゐるらしく、その羞らひは彼れの心を多少とも
不機嫌
(
ふきげん
)
へと転じた如くであつた。
アリア人の孤独
(新字旧仮名)
/
松永延造
(著)
それから、その弱々しいなかにも何か訴えを含んでいる声にひきつけられて、彼は妻の
枕頭
(
ちんとう
)
にそっと近寄ってみた。妻の顔は昨夜からひきつづいている
不機嫌
(
ふきげん
)
な
苛々
(
いらいら
)
したものを
湛
(
たた
)
えていた。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ベロヴゾーロフは、軍服のボタンをきちんとかけて、真っ赤な顔をして、
不機嫌
(
ふきげん
)
に
隅
(
すみ
)
の方に
坐
(
すわ
)
っていた。マレーフスキイ
伯爵
(
はくしゃく
)
の
華奢
(
きゃしゃ
)
な顔には、なんだか不気味な
微笑
(
びしょう
)
が、絶えず
漂
(
ただよ
)
っていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
仕掛るに隱居は
兎角
(
とかく
)
不機嫌
(
ふきげん
)
故
(
ゆゑ
)
手持不沙汰
(
てもちぶさた
)
に其日は
立歸
(
たちかへ
)
りしが彦兵衞は
如才
(
じよさい
)
なき男なれば偖佐竹樣の
勝
(
かつ
)
た所を
悦
(
よろこ
)
び
負
(
まけ
)
た所を
嫌
(
いや
)
がるは何か
謂
(
いは
)
れ有るべしと思ひ
翌日
(
よくじつ
)
は馬喰町の米屋へ
立寄
(
たちより
)
小間物を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
めづらしい
事
(
こと
)
、
此炎天
(
このえんてん
)
に
雪
(
ゆき
)
が
降
(
ふ
)
りはせぬか、
美登利
(
みどり
)
が
學校
(
がくかう
)
を
嫌
(
い
)
やがるはよく/\の
不機嫌
(
ふきげん
)
、
朝飯
(
あさはん
)
がすゝまずば
後刻
(
のちかた
)
に
鮨
(
やすけ
)
でも
誂
(
あつら
)
へようか、
風邪
(
かぜ
)
にしては
熱
(
ねつ
)
も
無
(
な
)
ければ
大方
(
おほかた
)
きのふの
疲
(
つか
)
れと
見
(
み
)
える
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
すっかり
不機嫌
(
ふきげん
)
になっている母親の代りに父親の肩によりすがろうとする大人びた
仕草
(
しぐさ
)
が、よしんばそのときかぎりの偶然の思いつきであったとしても、私の心には
犇々
(
ひしひし
)
と迫るものがあった。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
夫はひどく
不機嫌
(
ふきげん
)
な顔つきで云ったが、それきり黙り込んでしまったので、幸子には夫が何を考えているものとも分らなかった。が、十月の中旬に、夫が又二三日上京したことがあったので
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「それは面白い」と思わず手を
拍
(
う
)
った。すると兄は案外
不機嫌
(
ふきげん
)
な顔をした。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
時雄は黙ってこの
嬌態
(
きょうたい
)
に対していた。胸の騒ぐのは無論である。不快の情はひしと押し寄せて来た。芳子はちらと時雄の顔を
覗
(
うかが
)
ったが、その
不機嫌
(
ふきげん
)
なのが一目で解った。で、すぐ態度を改めて
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
現に定雄は、千枝子と自分との間に挟まれて、
不機嫌
(
ふきげん
)
そうにとぼとぼ歩いている子の清の足つきを見ていると、いつまで二人の歩みにつづいて来られるものかと、絶えず不安を感じてならなかった。
比叡
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
家内中
寄集
(
よりこぞ
)
りて、口を
解
(
ほど
)
いて面白そうに
雑談
(
ぞうだん
)
などしている時でも、皆云い合したように、ふと口を
箝
(
つぐ
)
んで顔を曇らせる、といううちにも取分けてお政は
不機嫌
(
ふきげん
)
な
体
(
てい
)
で、少し文三の出ようが遅ければ
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
玉目三郎は幾らか
不機嫌
(
ふきげん
)
に、背を向けている人夫を呼んだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
始終
(
しよつちゆう
)
からかひましたの。でもそれはいゝ人で、どんな事でも我慢して、ちつとも怒るなんてことはありませんでしたのよ。私たちにだつて決して
不機嫌
(
ふきげん
)
になぞなりませんでしたわ。さうだつたわねえ、ルヰザ?
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
不機嫌
(
ふきげん
)
な
春重
(
はるしげ
)
の
顔
(
かお
)
は、
桐油
(
とうゆ
)
のように
強張
(
こわば
)
っていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
私の
不機嫌
(
ふきげん
)
のとばっちりをうけるようになった。
黒猫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
と照彦様は急に
不機嫌
(
ふきげん
)
になってしまった。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
加ふるに寝冷えをしたる
不機嫌
(
ふきげん
)
さ
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
しかし頭は
禿
(
は
)
げ、身体は肥満し、顔色は黄色く、眠そうな様子をし、下唇は少したれ下がり、退屈そうな
不機嫌
(
ふきげん
)
な口つきをしていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「つくしは、いないよ。ついさっき、事務所へ行った。」と答えてやったら、急に
不機嫌
(
ふきげん
)
になり、言葉まで
頗
(
すこぶ
)
るぞんざいに
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
守は自分の家へ時々出入りするとは聞いているが、前へ呼んだこともない男が、何の話をしようとするのであろうと、荒々しい
不機嫌
(
ふきげん
)
な様子を見せたが
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
それが
素戔嗚尊
(
すさのおのみこと
)
には腹も立てば同時にまた何となく嬉しいような心もちもした。彼は醜い顔をしかめながら、
故
(
ことさら
)
に彼等を
脅
(
おびやか
)
すべく、一層
不機嫌
(
ふきげん
)
らしい眼つきを見せた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
若林は
不機嫌
(
ふきげん
)
そうに言ったが、お神はあの翌朝晴子が親の
家
(
うち
)
へ行ったことを、春よしのお神から聞いていたので、じきに察しがつき、若林の顔に暗示的な目を注いだ。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
不機嫌
(
ふきげん
)
に、急にだまり合ったまま雑夫の穴より、もっと船首の、
梯形
(
ていけい
)
の自分達の「巣」に帰った。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
その
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れ
方
(
がた
)
になると、
外
(
そと
)
へ
出歩
(
である
)
いていた
乞食
(
こじき
)
らがみんなもどってきました。あばた
面
(
づら
)
は、たいそう
不機嫌
(
ふきげん
)
な
顔
(
かお
)
つきをして
帰
(
かえ
)
ってくると、
少年
(
しょうねん
)
に
向
(
む
)
かっていいました。
石をのせた車
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そうして最初に沈黙を破ったのは、それまで私のために気づかって、かえっていつまでもそれを気にしすぎていることで一層私を
不機嫌
(
ふきげん
)
にさせていた、不幸な少女の方だった。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
博士は何となく
不機嫌
(
ふきげん
)
に、盃をがちゃんと台の上に置いて
毒瓦斯発明官:――金博士シリーズ・5――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
“不機嫌”の意味
《名詞》
不機嫌(ふきげん)
機嫌が悪いこと。
(出典:Wiktionary)
不
常用漢字
小4
部首:⼀
4画
機
常用漢字
小4
部首:⽊
16画
嫌
常用漢字
中学
部首:⼥
13画
“不”で始まる語句
不可
不思議
不憫
不図
不味
不審
不埒
不幸
不愍
不相変