鯉口こひぐち)” の例文
宇佐川鐵馬は小さい身體ををどらせると、苦もなく生垣を越えて、四角な顏をみにくく歪めたまま、逃げ腰乍ら一刀の鯉口こひぐちを切ります。
昨夜来たばかりの彼女は珍らしく今朝から老母に代つて早起して甲斐々々かひ/″\しくかすり鯉口こひぐちの上つ張りを着て、心持寝乱れの赤い手柄の丸髷にあねさんかぶりをして、引窓の下の薄明るいへつつひの前に
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
柔和さうに見えた小六郎が、打つて變つた激怒げきどに身を顫はせて、一刀の鯉口こひぐちをきつて詰め寄るのでした。
覆面の武士は、三人の供を後ろに追ひやるやうに、刀の鯉口こひぐちを切つて平次の前に立はだかつたのです。
早くも鎧通よろひどほしに氣がつくと、用箪笥から持つて來て、血塗つてお鈴の死骸に握らせ、自害らしく見せかけ、隣の部屋へ引つ返して鎧通しのさや鯉口こひぐちまで拭つて置いた。
櫻庭兵介が鯉口こひぐちをプツと切ると、八五郎横ツ飛びに五六歩、早くも門の外へ飛出して居りました。
何時の間に歸つたか、一刀の鯉口こひぐちを切つて、近寄らば目に物見せん構へです。
大振袖の紫のせて居るのも淺ましい限りですが、精巧のはかまは血に浸つて、前半に差した短いのはそのまゝ、細身の長い刀は、鯉口こひぐちでもきることか、自分の身體が芋刺いもざしになつてゐる癖に、さやごと二
それには間違ひもなく血が附いて居さうな氣がして、灯の下に持つて來ると、血などは少しも附いて居ず、その代り鞘の全體——わけても鯉口こひぐちのあたりのほうの木が、心持濡れて居るのは見逃せません。
プツリと鯉口こひぐちを切つて居ります。