饑死うえじに)” の例文
この一週間というものは、殆んど饑死うえじにをするかと思ったくらいで、こうした返事には慣れっこになっていたのだ。
小さきもの (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
どうにもならない事を、どうにかするためには、手段を選んでいるいとまはない。選んでいれば、築土ついじの下か、道ばたの土の上で、饑死うえじにをするばかりである。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
弓を引くことも馬に乗ることも、太刀を抜くことも、兵法も、何一つ手掛けていなかったからだ。饑死うえじにしなければならなかった。だが死ぬのは厭だった。そこで俺は考えた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかしそれが、貧乏でわが子が饑死うえじにするというような場合であったとすれば、裁判官もその事情を酌んで幾らか罪を軽くする。それを情状酌量というのだよ。
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
この時、誰かがこの下人に、さっき門の下でこの男が考えていた、饑死うえじにをするか盗人ぬすびとになるかと云う問題を、改めて持出したら、恐らく下人は、何の未練もなく、饑死を選んだ事であろう。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)