風濤ふうとう)” の例文
しからざればいらざる風濤ふうとうの描写をいて、主人公の身辺に起る波瀾はらん成行をもう少し上手に手際てぎわよく叙したらば好かろうと思う。
必ずしも島人がくわだて望んだことでないにもかかわらず、世降よくだって価値が広く認められるようになれば、すなわち彼らは風濤ふうとうの間に辛苦しなければならなかったのみか
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかし、この九十九里が飯岡いいおかの崎で尽きて、銚子の岬に至ると、また奇巌怪石の凡ならざるものがあります。それから先に、風濤ふうとうの険悪を以て聞えたる鹿島灘かしまなだがあります。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
口拍子くちびょうしに合せて、小舟を左右に大きくりうごかし、舟はまるで風濤ふうとうもてあそばれる一ようの枯れ葉に似ていた。しかもぐんぐんとそのまに岸から揚子江ようすこうのただ中へと離れて行くのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)