項低うなだ)” の例文
風もなく麗かな晩秋の日光を一ぱいに浴びた靜かな線路の上を足早に横切る項低うなだれた彼女の小さな姿が幽かに見えた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
真の婚約の主題——二人の人間がその余りにも短い一生の間をどれだけお互に幸福にさせ合えるか? あらがいがたい運命の前にしずかに頭を項低うなだれたまま、互に心と心と、身と身とを温め合いながら
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
しかし鴨田学士は、今度は何も云わずに項低うなだれていた。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひゞの入つた斑點に汚れた黄色い壁に向つて、これからの生涯を過去の所爲と罪報とに項低うなだれ乍ら、足に胼胝たこの出來るまで坐り通したら奈何どうだと魔の聲にでも決斷のほぞを囁かれるやうな思ひを
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)