離魂病りこんびょう)” の例文
はてな、昔の書物に、離魂病りこんびょうというものが見えているが、まさか今の時節、そんなこともあるまい。
一人二役 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは花房はなぶさの声や態度が、不思議なくらい藤沢ふじさわ酷似こくじしていると云う事だった。もし離魂病りこんびょうと云うものがあるとしたならば、花房は正に藤沢の離魂体ドッペルゲンゲルとも見るべき人間だった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
離魂病りこんびょうなんかてえ病気があるもんか、篦棒べらぼうくせえこたア言わねえもんだ、大方支那の小説でも拾読ひろいよみしアがッて、高慢らしい顔しアがるんだろう、と仰しゃるお客様もありましょうが
風呂場にあるべき鏡が、しかも一つしかない鏡が書斎に来ている以上は鏡が離魂病りこんびょうかかったのかまたは主人が風呂場から持って来たに相違ない。持って来たとすれば何のために持って来たのだろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
離魂病りこんびょうの様に、全く同じ怪物が二人現われたのだ。どちらが本物で、どちらが幽霊なのだ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
友達の科学雑誌社長の品川四郎が離魂病りこんびょうみたいに二重にぼやけて、あっちにもこっちにも存在する。しかも顔から姿から声までも、一分一厘違わない二人の奴が、同じ部屋で対面さえしたのだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)