雀色時すずめいろどき)” の例文
封建時代らしい女の気もちは明治三十二、三年ころにもまだかすかに残っていたであろう。僕はまたこういう時に「さあ、もう雀色時すずめいろどきになったから」
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
黄昏を雀色時すずめいろどきということは、誰が言い始めたか知らぬが、日本人でなければこしらえられぬ新語であった。
かはたれ時 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
やがて、雀色時すずめいろどき、桜の梢を渡って、上野の暮れ六つの鐘が鳴ります。
その雀色時すずめいろどき
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
沙金しゃきんは、おれのく時刻を見はからって、あの半蔀はじとみの間から、雀色時すずめいろどきの往来をのぞいている。そうしておれの姿が見えると、鼠鳴ねずみなきをして、はいれと言う。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二人は雀色時すずめいろどきの路地を出て、浅草の方へ急ぎました。
雀色時すずめいろどきもやの中を、やつと、この館へ辿たどりついて、長櫃ながびつに起してある、炭火の赤い焔を見た時の、ほつとした心もち、——それも、今かうして、寝てゐると、遠い昔にあつた事としか、思はれない。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)