隠坊おんぼう)” の例文
どつちみちたかが理知的な隠坊おんぼうであり屠殺者だけのことである。たかがそれだけのことではないか。木村重吉はふいに反抗を感じるのだつた。
やがて積みかさねたまきの上へ米の死骸が置かれた。それと見て人びとは念仏を唱えた。同時に隠坊おんぼうが薪に火を点けた。
妖蛸 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
所謂隠坊おんぼうに堕落してしまっては、名は良民の守戸しゅこたるシュクでいても、世間から賤視せられるに至るのは、けだしやむをえなかったでありましょう。
落語『目黒のさんま』で、秋の遠乗りに腹ペコの殿さまが、百姓家へはいって、老夫婦が食べるつもりのサンマの隠坊おんぼう焼きをもらい受け、呑つづみを打って
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
隠坊おんぼう目塗めぬりの土をばらばらとはぎおとして鉄の扉をあける。鉄板のうえに砕けた骨が灰にまざってるのを荒神箒こうじんぼうきに長い柄をつけたようなものでかきだしてりわける。
妹の死 (新字新仮名) / 中勘助(著)
戻り次第ダビに附すはずで、この村には隠坊おんぼうはいるが火葬場はなく、野天へ薪をつんで焼く。まる一晩かかるのである。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
守戸しゅこが既に守戸として実務を失い、その名もしゅくなまって、その根原が忘れられ、隠坊おんぼうや、掃除や、遊芸や、警固追捕などの職に従事する様になっては、それと同じ事をしている同等階級の特殊民に
すなわち墓守はかもりで、後世に云えば隠坊おんぼうの類です。