附焼刃つけやきば)” の例文
旧字:附燒刃
したがるけれど、あとの半分が物になっちゃいねえ、誰かに教えられた附焼刃つけやきばだ、いいから、そうしていねえ、一人前に二分ずつやる
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
下女はるいところへぶつかった。愛嬌が退いて不安が這入る。愛嬌が附焼刃つけやきばで不安が本体だと思うのは偽哲学者である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つまり僕は内から促されてしたのでなくて、入智慧でしたので、附焼刃つけやきばでしたのだから、だめであったと見える。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
如何なる種類の人でも、気取ったり、装ったり、てらったり、もの欲しそうな、附焼刃つけやきばなものは鼻もちがならぬ。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
あの悪辣あくらつな人間を以て自他共に許している大井篤夫が、どうしてあんな芝居じみた真似をしていたのだろう。あるいは人が悪いのは附焼刃つけやきばで、実は存外正直な感傷主義者センティメンタリストが正体かも知れない。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)