酒料さかて)” の例文
酒料さかてだのを要求される心配は更に無いとはいえ、ぶったくられた当人と、その身寄りの者の迷惑といったらたとうるに物がないのです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その落着くところと、与えらるる酒料さかての胸算用を度外にして、物好きに人を載せて走るということはありません。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いて、彼等が為す悪いこととして見るべきものがありとすれば、それは酒料さかてをゆするくらいのものだろう。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けれども、そういうわけにはゆかないから、お松はこの馬子に定めの賃銀と若干の酒料さかてとを与えて、自分は、また一人で心細い宿屋の一室へ隠れるようにしています。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おどかしておいて、長いのをスラリと引抜くのではなく、懐中から投げ出したのは若干の酒料さかてらしい。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兵馬も足をとどめて物蔭から遠見にしていると、駕籠賃も酒料さかても無事に交渉が済んで駕籠屋は引返す。駕籠を出た覆面は、お寺の門の中へは入らずに、垣に沿うて横路へ廻る。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「駕籠屋、築地の異人館まで急いでくれ、異人館、知っているだろう、赤髯の巣だ、毛唐が肉を食っているところだ、行け行け、異人館へ乗りこめ——酒料さかてはいくらでも取らせてやる」
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)