邦楽座ほうがくざ)” の例文
うすら寒い日の午後の小半日を、邦楽座ほうがくざの二階の、人気ひとけの少ない客席に腰かけて、遠い異国のはなやかな歓楽の世界の幻を見た。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あの映画が、東京の邦楽座ほうがくざに出たとき、築地小劇場の連中が、「メトロポリス」の実演をやった。そのとき沢山の美しいロボットが、短い労働服で出てきて、点々として器械的に働いていた。
人造物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あの人ッて、誰だ。この間一緒に邦楽座ほうがくざへ行った人か。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
邦楽座ほうがくざわきの橋の上から数寄屋橋すきやばしのほうを、晴れた日暮れ少し前の光線で見た景色もかなりに美しいものの一つである。
Liber Studiorum (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
常設館はいくつもあったがみんな小さなものでわずかの観客しかれなかったように覚えている。邦楽座ほうがくざ武蔵野館むさしのかんのようなものはどこにもなかったようである。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)