遣方やるかた)” の例文
し身のたのしみと心のたのしみとを併享あはせうくべき幸無さちなくて、必ずその一つをえらぶべきものならば、いづれを取るべきかを知ることのおそかりしを、遣方やるかたも無く悔ゆるなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼の行方ゆくへは知られずして、その身の家をづべき日はうしほの如く迫れるに、遣方やるかたも無くそぞろ惑ひては、常におぞましう思ひ下せる卜者ぼくしやにも問ひて、後には廻合めぐりあふべきも
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かくおもへる貫一は生前しようぜん誼深よしみふかかりし夫婦の死を歎きて、この永きわかれ遣方やるかたも無く悲み惜むなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)