逓信ていしん)” の例文
「年は三十七です。わたくし逓信ていしん省に勤めた小官吏です。この度飛騨の国の山中、一小寒村の郵便局に電信の技手となって赴任する第一の午前。」
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実を言ふと、その二三日前から、中橋氏は今度の内閣には、主だつた椅子の一つが屹度きつと自分の方に転げ込んで来るものと腹をめてゐた。内務か、農商務か、逓信ていしんか。
葉巻を横銜よこぐわえにしながら、場所柄をも考えないように哄笑こうしょうしている巨漢は、逓信ていしん大臣のN氏だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それでもまだ諸国逓信ていしん省は郵便物の托送を頑として鉄造船にたいしては拒みつづけた。
黒船前後 (新字新仮名) / 服部之総(著)
逓信ていしん省〔駅逓局〕は六万ドルの純益をあげ、手紙一本、金一セントなりともなくなったり盗まれたりしなかったというが、これは日本人が生れつき正直であることを証明している。