迂回まわ)” の例文
清岡は先刻さっき君江が昇った女阪の方へ迂回まわって見えがくれに後をつけた。それとは知らない二人は話しながら堀端を歩いて行く。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
夜叉やしゃのように、介は、どてを目がけて飛んで行ったが、枯れ芦の沼がいちめんに、そこを隔てているので、遠く迂回まわらなければ、堤にはのぼれなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのため旅人は路程を迂回まわり、家々ではとぼそを閉じまするような有様。既に柱松はしらもとに陣を取り、明朝此方へ取りかからん構え、必死に見えましてござりまする
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夜半よなかも過ぎたろう。渡りきった千余騎は、なおさら行軍をひそかにして、平家の陣のうしろへ迂回まわった。低い雨雲にも、ふかい夜霧にも、かがりが赤く映えていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……先刻、使いをうけて驚いたが、訊き合せているいとまもないし、やむなく道を迂回まわって会いに来た
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)