蹣跚よろ/\)” の例文
菊池がそれを憤慨して、入社した三日目に突然、社長の頬片ほつぺたを擲る。社長は蹣跚よろ/\と行つて椅子に倒れ懸りながら、「何をするツ」と云ふ。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
見れば其後に随いて、少年と一緒に歌ひ乍ら、人目も関はずやつて来る上機嫌の酔漢さけよひがある。蹣跚よろ/\とした足元で直に退職の敬之進と知れた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
蟻はすつかりべ酔つたが、それでも人間のやうに片手をひとの鼻先で拡げて金を貸せとも言はないで、唯もう蹣跚よろ/\と、其辺そこらを這ひ廻つてゐた。
町歸りの醉漢よひどれが、何やらつぶやき乍ら蹣跚よろ/\とした歩調あしどりで行き過ぎた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)