せま)” の例文
せまれば魚いよいよ躍る、彼は革命の精神に鼓動せられて、みずから裁する所以ゆえんを知らず。その獄中において安政六の新年を迎うるや、口占して曰く
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
次第に、谷がせまって来る、水は、大石の下に渦を巻く。深いところは紫を浅いところは藍を流している。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
やゝ行って、倒れた楢の大木に腰うちかけ、一休ひとやすみしてまた行く。高原漸くせまって、北の片岨かたそばには雑木にまじって山桜やまざくらの紅葉したのが見える。桜花さくら見にはいつも此処へ来る、と関翁語る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)