豼貅ひきゅう)” の例文
するとたちまち、あたりは暗くなり、雲のごとき気流のうちから、数千の豼貅ひきゅう(大昔、中国で飼い馴らして戦場で使ったという猛獣のこと、おすきゅうめす
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてこの呼延灼、韓滔かんとう彭玘ほうきの三大将軍がひきいる三軍、あわせて一万四千の豼貅ひきゅう(猛兵)がいよいよ都門をたつ日のさかんな光景といったら形容のしようもない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それも道理、妖法が吹き放った豼貅ひきゅうは、梁山泊軍の上まで行くと、みなハラハラただの枯葉こようになったり紙キレになって、何の加勢にもならずに仕舞ったものである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう暴挙は、保元ほうげん平治へいじの世にも行われたことがある。宮は必死になった。かつては吉野の奥、十津川の原始林をとりでとして豼貅ひきゅう叱咜しったした生命の持ちぬしでもある。
義貞は杯を横へほうった。——投げると見えたほど朱の杯は輪を描いてころがり、そしてとっさに一匹の豼貅ひきゅうは、その盲目的な勢いとたくましい体の下に勾当の内侍をねじふせていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血に狂う豼貅ひきゅう数万の大将として、尊氏が慎重でないわけはない。おそらくは、いまや動顛どうてん狼狽の極にあろう内裏の大宮人おおみやびとたちが——わけても後醍醐のご進退が——彼の胸にも想像されて
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
豼貅ひきゅう(戦いを好む猛獣)数万の者が、このところ刀鎗とうそうの血をぬぐって、いささか休息のため人間社会の中へ返っている。そして戦いなき夜を眠っていた。いやなかなか眠りもしていまい。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顕家はよくその豼貅ひきゅう(中国で昔、飼い馴らして戦陣に使ったという猛獣)
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)