象牙彫ぞうげぼり)” の例文
象牙彫ぞうげぼりなどでは全体にかまわず端から仕上げてゆくというやり方は随分行われるが、木彫では決してそれをさせなかった。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
兄孫権の手紙を読むうちに、もう紅涙こうるい潸々さんさん、手もわななかせ、顔も象牙彫ぞうげぼりのように血の色を失ってしまった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私が小さくて向島に住んでいた頃、父が医者だというので、或人が、真白で親指の頭位ある小さな髑髏どくろを持って来て見せました。あまり見事なのでよく見ましたら象牙彫ぞうげぼりの根附でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
心配そうに見張った黒い美しいひとみ象牙彫ぞうげぼりのように気高い鼻、端正な唇、しろつややかな頬、こうした神々こうごうしいろうたけた夫人の顔を見ていると、彼女の嘘、偽りが、夢にもあろうとは思われなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)