識閾しきいき)” の例文
承知しての方が、まだ始末がよいので、意識に上ったところでは、本当に知らなくて、識閾しきいきの下で欲望に甘えている点が困るのである。
無知 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
一つ一つの意識的な具象からは識閾しきいきの下に無数の根を引いており、その根の一つ一つはまた他のたくさんの具象の根と連結されている。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
またいったん通用してしまった場合にはなるべく早く訳語をつくって原語を社会の識閾しきいきから駆逐する事を計らなければならない。
外来語所感 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
余情等種々な符号で現わされたものはすべて対象の表層における識閾しきいきよりも以下に潜在する真実の相貌そうぼうであって、しかも
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
要するにこれらのモンタージュの要訣ようけつは、二つの心像の識閾しきいきの下に隠れた潜在意識的な領域の触接作用によってそこに二つのものの「化合物」にも比較さるべき新しいものを生ずるということである。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)