見性けんしょう)” の例文
見性けんしょうした日に、うれしさの余り、裏の山へけ上って、草木国土そうもくこくど悉皆成仏しっかいじょうぶつと大きな声を出して叫んだ。そうしてついに頭をってしまった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
禅は「見性けんしょう」というが、それは本有の性を直ちに見よとの意である。これを見ることが「成仏じょうぶつ」なのである。美の世界にもこの成仏がなければならない。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かくの如くにして始めて真に主客合一の境に到ることができる。これが宗教道徳美術の極意である。基督教キリストきょうではこれを再生といい仏教ではこれを見性けんしょうという。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
即ち所謂見性けんしょうの際には、『きつつはつつの大戦闘』をして『真の我が本体』を見る事が出来ても、また自身にはどのやうに生々しい実感が伴つてゐても、現実の事実にふれた時、矢張り同様の
平塚明子論 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
またこれは個人の例ではないが日本の昔に盛んであった禅僧の修行などと云うものも極端な自然本位の道楽生活であります。彼らは見性けんしょうのため究真のためすべてをなげうって坐禅の工夫くふうをします。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)