覊絆きづな)” の例文
『いや、僕はもつと長くつても好い。一年ぐらゐかういふ世離れたところにじつとしてゐたい? 世の中の覊絆きづなからすつかり離れて?』
島からの帰途 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
浅ましとは知る身にも、さて断ち難き、恩愛恋慕の覊絆きづなにぞ、かくても世には繋がるなると、朝な夕なの御歎きを、知らぬ世間の口々に。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
そのため平常克服してゐたところの性慾が、意志の覊絆きづなを離れて奔放に暴れ𢌞る。そこで外觀上には、酒が性慾を亢進させるやうに見えるのである。
酒に就いて (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
覊絆きづなはいつかかれたり。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
長い間住んだ土地を別れて来るに就いてのいろ/\の追懐や覊絆きづなもあつた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
恋慕の覊絆きづなも絶えたれば、いでや再びもとの我にかえりて、きのふけふ知りそめつるつくりぬし、かつは亡き父母君ふたおやの、声なき仰せに随ひて、あはれ世に生まれ出し甲斐ある身ともならばやと
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)