西方浄土さいほうじょうど)” の例文
「この御庵室にもの申す。西方浄土さいほうじょうどからお詣りが遅いから、急いでおいでがあるように阿弥陀仏からのお使いでございます」
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
無残な横死をした父がせめて西方浄土さいほうじょうどにでも生れることか、大事な忘れものをしたゝめに今も此の世に未練を残して浮かばれずにいるかと思うと
後期仏教の西方浄土さいほうじょうどとは対立して、対岸大陸にははやくから、東方を憧憬しょうけいする民間信仰が普及していた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
西方浄土さいほうじょうどの空想を刺戟するゆうべの太陽が、いかにも似つかわしい場所でわれわれに働きかけてくれたのである。われわれはこの偶然に驚きながら息をつめて聖観音を見まもった。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
熊谷の蓮生坊が上方かみがたから帰る時は、西方浄土さいほうじょうどを後にするのを本意にあらずとして、いつでも逆に馬に乗って『極楽に剛の者とや沙汰すらん、西に向ひて後ろ見せねば』
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)