衣裳戸棚いしょうとだな)” の例文
見たこともないような大きな鏡ばかりの衣裳戸棚いしょうとだなげちょろの鏡台、じゅくじゅく音を立てているスティム
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
僕は壁にかけた外套に僕自身の立ち姿を感じ、急いでそれを部屋の隅の衣裳戸棚いしょうとだなの中へほうりこんだ。それから鏡台の前へ行き、じっと鏡に僕の顔を映した。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夕食後、彼は妻の枕許まくらもとでトオマス・マンの「衣裳戸棚いしょうとだな」の冒頭を暗誦あんしょうしてきかせた。女中のたつは通いで夜は帰って行ったから、その部屋はいま二人きりの領分であった。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
博士は衣裳戸棚いしょうとだなから、古くなったガウンをとりだして