行倒ゆきだおれ)” の例文
蟇口がまぐちを長蔵さんに取られてから、懐中ふところには一文もない。帰るにしても、帰る途中で腹が減って山の中で行倒ゆきだおれになるまでだ。いっその事今から長蔵さんを追掛けて見ようか。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
贋手紙を作るそのあいだの道中と云うものは随分困りました。一人旅、こと何処どこの者とも知れぬ貧乏そうな若侍、行倒ゆきだおれになるか暴れでもすれば宿屋が迷惑するから容易に泊めない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
腫物しゅもつが出来ても針をすることはず見合せたいとい、一寸ちょっとした怪我でも血が出ると顔色がんしょくが青くなる。毎度都会の地にある行倒ゆきだおれ首縊くびくくり、変死人などは何としても見ることが出来ない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)