だに)” の例文
「やっぱりだにがついているんだ。可哀そうに。脚の爪の間に蝨がつくと、自分では取れないからな。よしよし取ってやるぞ」
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
翁が検めみると獣のだにが五六ぴきはかまの上から取り付いていた。猪の相撲場の土には親猪が蝨を落して行ったのだった。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ビックリ仰天して逃出すと、頭の上から大鷲が蹴落しに来る。枝の間をつたわって逃げおおせたと思うと、今度は身体からだ中にだにがウジャウジャとタカリ初める。山蛭やまひるが吸付きに来る。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
総ての動物は、ごく小さいだにから、大きな獣に至るまで、お前達と同じやうに、何よりも先づ空気によつて生きてゐるのだ。魚やその外の水中に住んでゐるものでさへも、矢張り同じ事だ。
所が道で、ホラ、びっこを引いた犬がいたろう。脚の爪の間のだにを取ってやる時に、ふと脚の裏を見ると赤味のかかった紫色のインキがついているじゃないか。
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
すると向うの方から白い犬が尻尾しっぽを振りながら飛んで来た、見ると、先刻森君が脚のだにを取ってやった犬だ。その犬の他に二三匹仲間の犬がいてしきりに、ジャレ始めた。
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)