蝋管ろうかん)” の例文
いよいよ蝋管ろうかんに声を吹き込む段となって、文学士は吹き込みラッパをその美髯びぜんの間に見えるあかいくちびるに押し当てて器械の制動機をゆるめた。
蓄音機 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
蓄音機が非常に珍しくまだ平円盤がなくて蝋管ろうかんの時分、高いところへ蓄音機をえてそのわきに端座し銭をとって今日のレシーバーの役目をする長いゴムの管を客の耳に貸し
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
これはサラサーテのレコードと同様、多分蝋管ろうかんから平円盤にリ・レコードしたものだろうという説があるが、音は非常に小さくて、それこそ有るか無きかの可愛らしいものだ。
安月給取りの蓄音器じゃあるまいし、もうソロソロ蝋管ろうかんを取り換えちゃどうです。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この蓄音機はともかく世界最初のものでありまして、今ではイギリスの博物館に保存されてあります。エディソンはその後、円筒を蝋管ろうかんに換え、更に後には円盤型のレコードをもつくったのでした。
トーマス・エディソン (新字新仮名) / 石原純(著)
もや蝋管ろうかんの出来た蓄音器ちくおんきの如く、かつはるかに響く。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
証拠物件に蝋管ろうかん蓄音機が持出されたのに対して検事が違法だと咎めると、弁護士がすぐ「前例」を持出すのや、裁判長のロードの少々勘の悪いところなどが如何にもイギリスらしくて
映画雑感(Ⅴ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
蝋管ろうかん式というやつで、長いくだの先を、耳にはさんできいたのである。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その後にサムナー・テーンターやグラハム・ベルらの研究によって錫箔すずはくの代わりに蝋管ろうかんを使うようになり、さらにベルリナーの発明などがあって今日のグラモフォーンすなわち平円盤蓄音機ができ
蓄音機 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)