虫蝕むしく)” の例文
いやですよウだ。おっさんだって、若い頃には覚えがあるでしょ。なンともかンとも、あたしゃあ、あの虫蝕むしくなつめみたいな押司おうしさんの顔を
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしはその実物を見ませんが、なにかの焼き薬か腐れ薬で虫蝕むしくいのように書いたんでしょう。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
きめておいたから、六波羅の内へ入って、せいぜい、鼻毛の毛抜きと虫蝕むしくい本でもそばにおいて、独りでおうたくらな熱でも吹いているがいい
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや常に、五百ほどな用意はと、心がけるのだが、虫蝕むしくいやカビにさせぬだけでも、骨が折れるわ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして袂から煎豆いりまめを出して、ぽりぽり食べ初めたが、時々、愛くるしい唇の間から、虫蝕むしくいで黒くなった糸切歯やえばが見え、あまり歯が丈夫でないたちとみえて固い豆がよくめない。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを折々に「拝見」というかたちで、破損や虫蝕むしくいなどのしらべにかかった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)