菲薄ひはく)” の例文
すなわちこの実の藍色なのは単にその実の表皮だけであって、その表皮は極めて菲薄ひはくな膜質で何の色汁も含んでいない。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
アルイハ主ノ蔵スル所、アルイハ客ノ携ル所、心ヲ潜メテ以テ品賞ス。相菲薄ひはくセズ。相阿諛あゆセズ。惟公論ヲ然リトナス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
誠に宜しく聖聴を開張し、以て先帝の遺徳をあきらかにし、志士の気を恢弘かいこうすべし、宜しくみだりに自ら菲薄ひはくし、をひき義をうしない、以て忠諫ちゅうかんの道をふさぐべからず——
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世情ようやく澆季ぎょうきに移り、人心ようやく菲薄ひはくに流れ、国体まさにその神聖を減じ、忠孝まさにその活気を失わんとするに当たり、広くこの理を開示するは、ひとり真理のために要するのみならず
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)