菱屋ひしや)” の例文
四谷の菱屋ひしや横町に、安政のころ豆店まめだなという棟割長屋むねわりながやの一廓があった。近所は寺が多くて、樹に囲まれた町内にはいったいに御小役人が住んでいた。
妙義町みょうぎまち菱屋ひしや門口かどぐち草鞋わらじを穿いていると、宿の女が菅笠すげがさをかぶった四十五、六の案内者を呼んで来てくれました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
菱屋ひしやの番頭をしていて溜め込んだと言われ、元手が非常に潤沢な上、金蔵は年に似ぬ締り屋で、女房を貰って、一人口ふやすのが惜しさに、下女一人、小僧一人を相手に
それじゃ起因おこりは海の方、なるほど始終、浪が小石をッつけます、特別その音でも聞違えて、それで慌てたかとも存じられますが、またそれにいたしますと、北のはずれの菱屋ひしやでは
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうだ、井村、貴様は四条通りの菱屋ひしやという商人を知っているはずじゃ」