荒蕪くわうぶ)” の例文
が、批評も亦紅毛人の作品に遜色そんしよくのあるのは確かである。僕はかう云ふ荒蕪くわうぶの中に唯正宗白鳥氏の「文芸評論」を愛読した。
那須野の荒蕪くわうぶの中を、今日でも人の滅多に通らないやうなところを一気に真直に突切つて行つたのであるといふ事が私に飲み込めて来たからである。
黒猫 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
長城万里にわた荒蕪くわうぶ落日に乱るゝの所、ちやうたる征驂せいさんをとゞめて遊子天地に俯仰ふぎやうすれば、ために万巻の史書泣動し、満天の白雲つて大地を圧するの思あり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
荒蕪くわうぶノ地ヲ開墾スルナド興スベキ産業ハ天然ノ景色ト相俟あひまツテ有志ノ志ヲ待チツツアル、牡鹿唯一ノ都ハ無意味ニ廃頽はいたいニ帰スベキデハナイ、石巻恢復ノ策三ツアル
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
然るに英吉利語訳の大陸文学は、亜米利加向きのものが多い。何故なぜと云へばホイツトマン以後、芸術的に荒蕪くわうぶな亜米利加は、他国に天才を求めるからである。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)