茫々然ぼうぼうぜん)” の例文
はや正午と云ふにいまだ朝の物さへ口に入れず、又半銭をも帯びずして、如何いかんとするにか有らん、猶降りに降る雨の中を茫々然ぼうぼうぜんとして彷徨さまよへり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そこで兵馬は、茫々然ぼうぼうぜんとして自失するの思いです。跫音あしおとに導かれて、かえって無人の曠野こうやへ連れて来られたような心持を如何いかんともすることができません。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あるひは罪悪かも知れん。けれども、茫々然ぼうぼうぜんと呼吸してゐるばかりで、世間に対しては何等なにらの益するところも無く、自身に取つてはそれが苦痛であるとしたら、自殺も一種の身始末みじまつだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)