花顔かんばせ)” の例文
と、言い払い、ホホとその白い花顔かんばせが闇を占めて笑っているかのよう。……宋江以下、修羅しゅらという修羅の場かずをふんできた梁山泊の男どもも、思わず馬列をすくみ立てて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、叫びかけて、おもわずはしたない驚きの目をしばらく彼女の花顔かんばせから離しえなかったものだった。それほど彼女の眉目みめは若き日のかの草心尼に似て美しくまばゆくもあった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこをいま、を片手からげに、抜けるほど白い花顔かんばせの人が、素足で静かにどこかへ消えて行った。あたりの蕭条しょうじょうとほのぐらい伽藍がらんのこと、なにかそれはあやしの物と見えなくもない対照だった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おや、苗字はわたしとおなじなのね。わたしはよいが、李太白りたいはく(唐朝の大詩人)さまは、さぞ……ホ、ホ、ホ、ホ」と、その花顔かんばせたもとの蔭につつみながら「ご迷惑がッていらっしゃるでしょうね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)