膝行ゐざり)” の例文
そしてお玉の死骸の側に膝行ゐざり寄ると、そのこめかみのあたりへ左手を掛け、右手の生濕なまじめりの小菊を、死體の耳の穴へ、そつと差込むのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
お倉お倉と呼んで附添ひの女子と共に郡内の蒲團の上へ抱き上げて臥さするにはや正體も無く夢に入るやうなり、兄といへるは靜に膝行ゐざり寄りてさしのぞくに
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
膝行ゐざり寄つたのは、小鬢こびんに霜を置いた五十前後の武士。花嫁の父、秋山佐仲といふのでせう、恰幅かつぷくの立派な、眼鼻立ちの整つた、物言ひの確りした人物です。
お舟は膝行ゐざり寄つて、和助の激情に顫へる手を取るのです。涙はお互の顏も見えないほど降りそそぎました。
平次に言はれて、さかさ屏風の中に膝行ゐざり寄つた仁兵衞は、恐る/\死骸の顏に掛けた白布を取りましたが
平次は膝行ゐざり寄つて、死顏に近々と首を垂れると、靜かにそれをおほつた白いきれを取りました。
平次は馬糞まぐそ線香をあげて、丁寧に拜むと、膝行ゐざり寄つて市之助の死骸を調べました。
平次は佛樣を片手拜みに、そつと膝行ゐざり寄つて、顏へかけた手拭を取りました。
彦兵衞は亂醉して、正體もなく眠りこけた東作の側に膝行ゐざり寄りました。
と靜かに膝行ゐざり寄る平次。