胸算用むねさんよう)” の例文
西鶴の『胸算用むねさんよう』に橙のはずれ年があって、一つ四、五分ずつの売買であったため、九年母くねんぼを代用品にしてらちを明けた、という話が出ている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
鼠は好んで人の物を盗みかくす。西鶴の『胸算用むねさんよう』一に、吝嗇りんしょくな隠居婆が、妹に貰いし年玉金を失い歎くに、家内の者ども疑わるる事の迷惑と諸神に祈誓する。
そうしてこれを手始めに『諸国咄しょこくばなし』『桜陰比事おういんひじ』『胸算用むねさんよう』『織留おりとめ』とだんだんに読んで行くうちに、その独自な特色と思われるものがいよいよ明らかになるような気がするのであった。
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
原文は、四百字詰の原稿用紙で二、三枚くらいの小品であるが、私が書くとその十倍の二、三十枚になるのである。私はこの武家義理、それから、永代蔵えいたいぐら、諸国噺、胸算用むねさんようなどが好きである。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
西鶴の『永代蔵』であったか、『胸算用むねさんよう』であったか、台所に魚懸さかなかけというものがあり、年末にぶりでも懸けてあるのを見て、出入の者がもう春の御支度も出来ましたという条があったと記憶する。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
胸算用むねさんよう、巻二の二、訛言うそただは聞かぬ宿)
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)