胎動たいどう)” の例文
やあ、いよいよ御到着が近づきましたネ、科学小説時代! ——と。僕はそのとき、たしかに科学小説時代の胎動たいどうを耳に捕えたのであった。
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
胎動たいどうに異ひなかつた。それにれて彼女の心臓も思ひ出したやうに苦痛を訴へはじめた。明子はこの時さめざめと泣いた。人々は彼女の不幸を哀れんだ。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
しかし、以上の事柄だけでも、九州における武門の胎動たいどうがほぼどんな形で世間に口火を切りだしたかはよく分る。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水滸伝は一名を北宋水滸伝ともいわれるように、徽宗皇帝治下のそうした庶民世間の胎動たいどうをえがいた物語なので、前提として、時勢の大河がどんな時点を流れていたか、それだけを知ればよい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)