背鰭せびれ)” の例文
胴腹に合衆国の略語をつけた大きなサモンが、背鰭せびれをそよがせながら河の浅瀬をのぼってゆくのを見ると、おや、狐にでもつままれたかと、誰しも一応はびっくりするのである。
南部の鼻曲り (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
岩がちの海岸からところどころに魚の背鰭せびれのやうにぎざぎざな岩礁が沖のはうまでつきでて、道を堰かれた波が海坊主の頭みたいに円くもりあがつてはさつと砕けてしぶきを飛ばす。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
再び背鰭せびれを立てようとして焦っても、その事はもう為し得なかったのである。
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)