肱掛椅子ひぢかけいす)” の例文
おれの家の二階の窓際には、古ぼけた肱掛椅子ひぢかけいすが置いてある。おれは毎日その肱掛椅子ひぢかけいすへ腰をおろして、ぼんやり往来わうらい人音ひとおとを聞いてゐる。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
テムプル先生は、ヘレン・バーンズに、煖爐だんろの傍の低い肱掛椅子ひぢかけいすにかけるようにと云つて、彼女は別のに坐り、私を側に呼んだ。
するとおれもいつのにか、古ぼけた肱掛椅子ひぢかけいすに腰を下して、往来の人音を聞く事がものういやうになり始めた。いくらおれが待ち暮した所で、客は永久に来ないかも知れない。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さう、火はしばらくの間きつけられてあつて、よく燃えてゐた。私は爐邊に彼の肱掛椅子ひぢかけいすを置いて、卓子テエブルをその傍に押しやつた。窓掛を下ろし蝋燭を持つて來てともすばかりにしておいた。
おれは静に又二階へ行つて、窓際の肱掛椅子ひぢかけいすに腰を下した。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)