羽化うか)” の例文
さながら人間の皮肉を脱し羽化うかして広寒宮裏こうかんきゅうりに遊ぶ如く、蓬莱ほうらい三山ほかに尋ぬるを用いず、恍然こうぜん自失して物と我とを忘れしが
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
けれども惜しい事に本文は挿画ほどに行かなかった。中には欲のかたまり羽化うかしたような俗な仙人もあった。それでも読んで行くうちには多少気に入ったのもできてきた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あれがもし、鳥にでもさらわれたら、思う人は虚空こくうにあり、と信じて、夫人は羽化うかして飛ぶであろうか。いやいや羊が食うまでも、角兵衛は再び引返ひきかえしてその音信おとずれは伝えまい。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)