羸痩るいそう)” の例文
全身には大出血特有の不気味な羸痩るいそうが現われ、弛んだ皮膚は波打って、それが薄気味悪く、燐光色に透き通って見えるのだった。
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
新島君は当時より既によほど健康を損じておられたものと見えて、顔色蒼白そうはく体躯たいく羸痩るいそうという風が見えた。屡々しばしばせきをしておられたのが今なお耳に残っている。
顔色蒼く頬もこけ、全身羸痩るいそうしているのは、杉窪の里で受けた傷が、いまだにたたっているからであろう。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
又、かの肺結核の際、患者が著しく羸痩るいそうして、蛋白質を多量に補給しなければならなくなるのは、肺臓が結核菌のために冒されて、窒素固定作用を減弱せしめられるためだと考うべきでありましょう。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「目立って、ご羸痩るいそうなされました。なんともお痛わしいことで」
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
目立った羸痩るいそうを示しているのだから、当然、その部分の菱形を中心にして、三稜形をした骨端と、膝蓋骨の下端に当る部分とが合したもの——それが
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
何故なら、ときたま外見に現われない発作があるからね。その時強直なり羸痩るいそうなりが起った場合に、僕等はとんでもない錯誤を招かんけりゃならんのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
屍体には、これほど明らかな羸痩るいそうが現われていて、そのくせ、血がいったいどこへ行ってしまったのだろうか。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)