綢繆ちうびう)” の例文
詩家あに無情の動物ならむ、否、其濃情なる事、常人に幾倍する事いちじるし、然るに綢繆ちうびう終りを全うする者すくなきは何故ぞ。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
夜々綢繆ちうびうの思ひ絶えざる彷彿はうふつ一味の調は、やがて絶海の孤島に謫死てきししたる大英雄を歌ふの壮調となり五丈原頭ごぢやうげんとう凄惨せいさんの秋をかなでゝは人をして啾々しうしう鬼哭きこくに泣かしめ、時に鏗爾かうじたる暮天の鐘に和して
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
是等の類同なる諸点あるが故に、同性相むところよりして、詩家は遂に綢繆ちうびうを全うする事能はざる者なるか。夫れ或は然らむ、然れども余は別に説あり、請ふ識者に問はむ。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)