紅殻べんがら)” の例文
旧字:紅殼
稲荷のほこらも垣根も雪に隈取くまどられ、ふだんの紅殻べんがらいろは、河岸の黒まった倉庫に対し、緋縅ひおどしのよろいが投出されたような、鮮やかな一堆いったいに見える。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
昼夜銀行の横を曲って、泡盛あわもり屋の前をはいった紅殻べんがら塗りの小さいアパート。二階の七番と教えられて扉を叩く。何もないがらんとした部屋なり。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「つまらねえ事を言うな——こうっと、あの浪人者が手習師匠でないとすると、あの袖の赤いのは朱じゃなくて紅殻べんがらだ」
それにつけても、こんなに荒れたままで大川屋さんに差上げては、いくら何でもお気の毒だからと申して、玉垣と鳥居を塗ったついでに、木連格子きつれごうしだけは紅殻べんがらで塗っておきました。